今、ミステリーといえばこの3冊
しまった……ミステリーだから、肝心なところには触れられない。でも、面白いから読んで読んで! だけじゃ怒られる? うーーん。
三冊の中でもイチオシは『骨を弔う』宇佐美まことです。著者を男性だと思っていらっしゃる方は意外と多いのでは? かくいう私もそうでした。
『骨を弔う』は、堤防の土の中から、埋められてからかなりの年数が経った骨格標本が見つかったという新聞記事から始まります。この記事を読んだ豊は、30年前に小学生だった自分たち5人が埋めたと思い込んでいた標本なのではないかと考えます。確かにリーダー格の女子がいましたが、現在は所在不明。彼女は一風変わった女の子で、名前は真実子といいました。豊は、故郷を離れて暮らす幼馴染たちを訪ねては、骨格標本を埋めた記憶を手繰っていきます。「なぜ? そんなことを」と思われても、探っていきます。過去の出来事を思い出す作業を重ねていくうちに現在の幼馴染の状況が次第に明らかになっていきます。壁でふさがれたように思っていた境遇は、過去を明らかにしてゆくことで、その壁の厚さが薄くなり、重量感が薄れてゆく。豊自身も同様でした。あの時埋めたのは、一体何なのか。真実が明らかになった先に見えるものは、感動と一体化した衝撃でした。
読者にとって、ミステリーを読む愉しみのひとつに「衝撃」があります。単に驚くだけではなく心まで揺さぶられる。この物語には、それがあります。絶対に面白いと断言できます。
2作目は『火のないところに煙は』芦沢央、怖いです。
一番怖いのは生きている人間だということはわかっていても、これは怖いです。じゃあ怖いのが苦手な人には読めないのかというと、そんなことはなく、謎解きの面白さと怖いもの見たさも存分に味わえます。
最後は『黙過』下村敦史、江戸川乱歩賞受賞作『闇に香る嘘』に驚いた方は、あの驚愕を超えたと感じていただけると思います。
『火のないところに煙は』もそうですが、連作短編集という形で、最後に衝撃が! というミステリー好きにはたまらないものがあります。「生命」とは何かを移植手術、安楽死、動物愛護などから、問いかけます。最後に待ち受ける究極の選択を読者それぞれがどう受け止めるか。