◉話題作、読んで観る?◉ 第29回「宇宙でいちばんあかるい屋根」

◉話題作、読んで観る?◉ 第29回「宇宙でいちばんあかるい屋根」

脚本・監督:藤井道人/主題歌:清原果耶「今とあの頃の僕ら」/出演:清原果耶 伊藤健太郎 水野美紀 山中崇 醍醐虎汰朗 坂井真紀 吉岡秀隆 桃井かおり/配給:KADOKAWA
9月4日(金)より全国ロードショー
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 若手演技派として注目されている清原果耶の初主演映画。脚本・監督は『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれた藤井道人監督。日本では珍しい骨太なポリティカルサスペンスとして評価された『新聞記者』からがらりと変わり、10代の少女の視点から描いた家族の物語となっている。

 ニューヨーク在住の作家・野中ともその同名小説が原作だが、ファンタジー色が強めの原作に比べ、現実的なドラマとして藤井監督は落とし込んでいる。中学生のつばめ(清原果耶)は周囲からは優等生と思われ、何の不自由もなく暮らしているように見えるが、家庭でも学校でも本音を口にすることができず、息苦しさを感じている。隣に住む大学生の亨(伊藤健太郎)に想いを寄せているものの、正直になれない自分に不満が増すばかりだった。

 そんなとき、雑居ビルの屋上で魔法使いのような老女・星ばあ(桃井かおり)と出会う。口が悪い星ばあには、つばめは素直に悩みを打ち明けることができた。

「時間はもっと気持ちよく使え」「自分がどんな屋根の下にいるか知っている人間は強い」という星ばあの言葉をきっかけに、つばめはそれまでとは違った視点から物事を考えるようになる。

 撮影時17歳だった清原と、ベテラン女優・桃井かおりとの掛け合いが魅力的だ。世代も俳優としてのタイプも異なるふたりだが、違ったもの同士が触れ合うことで新しい世界が広がっていく。クラゲが群舞する中をふたりが漂う幻想的なシーンなど、桃井も楽しんで演じている。

 親との縦の関係とも、学校の友達との横の関係とも異なる、星ばあとのゆるい斜めの関係がつばめには心地よい。母親(坂井真紀)と血が繋がっていないことを気にしていたつばめだったが、家族とは与えられるものではなく、人と人との繋がりを重ねて育てていくものであることを理解することになる。

 清原は、藤井監督のオリジナル脚本作『デイアンドナイト』に続くヒロイン役。『デイアンドナイト』も社会に居場所のない人々が寄り添いながら生きようとする、社会派ドラマだった。閉塞感の増す現代社会では、自分の居場所探しこそがいちばん切実な問題なのかもしれない。

(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2020年9月号掲載〉

原作はコレ☟
『宇宙でいちばんあかるい屋根』

『宇宙でいちばんあかるい屋根』
野中ともそ/著
(光文社文庫)
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