羊の国の「イリヤ」

週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 吉見書店 竜南店 柳下博幸さん
 ドン・ウィンズロウによる3部作『犬の力』『ザ・カルテル』『ザ・ボーダー』。いずれの作品も、暴力と硝煙うずまくメキシコ麻薬戦争のフィクションを凌駕した現実をベースに、麻薬王国の興亡を魅力あるサブキャラクターたちが極彩色に彩った強烈にハードで非情なノワール小説の傑作だ。そしてドン・ウィンズロウが新たな3部作の始まりに選ん
◎編集者コラム◎ 『羊の国の「イリヤ」』福澤徹三
「週刊ダイヤモンド」2021年9月11日号の記事から話を進めたい。ネットに掲載された特集ページの見出しは、まるで身も蓋もない。「貧困大国ニッポンの『階層データ』初公開! 全5階級で年収激減の格差世襲地獄」そして記事はこう始まる。「もはや、日本は経済大国ではなく、貧困大国になってしまったのかもしれない。」さらに、「日本の