若松英輔

若松英輔「光であることば」第12回
学びと勉強 足掛け四年勤務した大学を辞めた。最初から腰掛のつもりだったのではない。前職に区切りをつけた転職だった。十五年ほど前に起業した会社の負債を完済したうえで、経営のバトンもしかるべき人に渡して、大学の門をくぐった。環境を整え、決意を自分に言い聞かせようとしたつもりだったが、それでも辞職の決断をしたのにはそれなりの
若松英輔「光であることば」第11回
詩が生まれるとき Ⅰ  若いころは、思うように生きたいと願っていた。そうできることがよいことだとも感じていた。だが年齢を重ねてみると、思ったとおりの日々は、真に生きられた時間ではなく、作りもののように感じるようになった。そればかりか振り返ってみると、思うようにと自分では信じていても、それは誰かが定めた価値をなぞっている
若松英輔「光であることば」第10回
ありのままの世界 ありのままの姿を描くこと、それが芸術家たちの悲願だといってよい。ただ、ありのままといってもそれを認識する主体が何になるかによって世界のありようはまったく違ったものになる。「ありのまま」というと通常、写真で撮影した風景や物体のように、誰の目にも明らかな様子をいうのだろう。だが、じつは、そうした世にいう客
若松英輔「光であることば」第9回
人生の季節 人の出会いにも似て、本との邂逅も突然にやってくる。書架にあるだけではその本と出会ったとはいえず、知り合いに会ったに過ぎない。人との関係がそうであるように本もまた、思わぬときにその秘密を語ってくれるようなことがある。吉田松陰(一八三〇〜一八五九)との関係もそうして生まれた。松陰自身の書物も彼をめぐって書かれた
若松英輔「光であることば」第8回
たましいの燈火――たましいとは何か Ⅰ 「たましい」とは何か。そんなことをずっと考えている。答えがでないことは分かっているのだが、長く続く危機の時代にあって、「たましい」をはたらかせなければならない、そう感じることが多いからかもしれない。ここでいう「たましい」は、先の戦争で叫ばれた大和魂とはまったく関係ない。また、どこ
若松英輔「光であることば」第7回
孤独のちから 多くの人が、何でもなさそうにやっていることができなかった。そんな経験をしたことはないだろうか。たとえば、幼い頃、どうしても靴のひもが結べなかったとか、どうしても忘れ物をしてしまうとか、あるいは、学校から親に渡すように伝えられた書類をどこかに失くしてしまうとか。私は、このほかでも多くのことで、不如意な経験を積み重ねてきた。
若松英輔「光であることば」第6回
知ると識る──自由について Ⅰ 自由とは何かを明言するのはむずかしい。たとえば、自由の定義とは何かとたずねられても、答えに窮する人も少なくないだろう。状況は思想家と呼ばれる人たちにおいても同じで、自由論は、古くから、そして今もなお、探究され続けている永遠の主題の一つになっている。だが、不自由とは何かと聞かれたらどうだろ
若松英輔「光であることば」第5回
感じるものの彼方へ 初期ドイツ・ロマン派を象徴する人物の一人にノヴァーリスがいる。小説『青い花』の作者といった方がよいかもしれない。本名はフリードリヒ・フォン・ハルデンベルクという。一七七二年に生まれ、一八〇一年、二十八歳で世を去った。
若松英輔「光であることば」第4回
なぜ、物を書くようになったのか。若松さんにとっての「言葉」体験とは── 書くことの爆発 幼稚園に通うのが嫌だった。そのころから集団行動が苦手だった。それでもどうにか卒園できたのは、その教育方針がある特殊なものだったからかもしれない。カトリック天使幼稚園という名前のとおりの場所で、教会が併設されていた。
若松英輔「光であることば」第3回
詩を書くことでいのちの燈火を燃やし続けた若松さんにとって「詩歌のちから」 とは── 静寂の音信おとづれ  世の人々は悲しむ者を励ます。悲しむことは不幸である。早く悲しみを乗り
若松英輔「光であることば」第2回
二度目の緊急事態宣言発令直後に若松さんが書く「死」のこと、人生における「居場所」のこと―― 人生の門  悲しみや苦しみを生きるとき、まったく励まされないのも寂しいのかもし
若松英輔「光であることば」第1回
混迷の時代をどう生きるべきか――若松英輔さんが綴る明日を照らすことば よろこびについて  人は、よろこびがなくては生きていけない。からだが水を必要とするように、心はよろこ
若松英輔さん
 新連載「私の本は、あらゆるジャンルでご活躍される方々に、「この本のおかげで、いまの私がある」をテーマに、本のお話をお伺いする企画です。 第1回は、批評家であり、詩人でもある若松英輔さん
若松英輔さん
 新連載「私の本」は、あらゆるジャンルでご活躍されている方々に、「この本のおかげで、いまの私がある」をテーマに、本のお話をお伺いする企画です。 第1回は、批評家であり、詩人でもある若松英
若松英輔さん
 このたび、小説丸では新連載を始めます。その名も「私の本」。あらゆるジャンルでご活躍されている方々に、「この本のおかげで、いまの私がある」をテーマに、本のお話をお伺いする企画です。