電車のおじさん

辛酸なめ子「電車のおじさん」第23回
 気付いたら苦手な人のことを延々と考えてしまう。玉恵はそんなことでエネルギーを消耗したくなくて、電車のおじさんの語ったアドバイスを心の中でリピートしました。 「メガネには罪はない」  思い出しましたが
辛酸なめ子「電車のおじさん」第22回
 会社で「祖父活」疑惑をかけられた玉恵。パパ活よりもさらにディープな語感です。社内でどのくらい広まっているのかわかりませんが、不思議と60代以上のおじさん社員が優しくなったような気がします。彼女は、結
辛酸なめ子「電車のおじさん」第21回
 休日の昼下がり、カフェでお茶を飲んでいたら、隣の席で若い男女がスイーツを食べながら、小声で何か話していました。「パパがね……」と女子が声をひそめて話すのが玉恵の耳に入り、なんとなく気になって耳を傾け
辛酸なめ子「電車のおじさん」第20回
「ちょっとお参りしてきます」と玉恵はおじさんに告げ、亀戸天神の本殿に向かいました。厳かな気持ちで二礼二拍手一礼をしてお賽銭を入れると目を閉じ、(会社の風紀の乱れがおさまりますように。煩悩が浄化されます
辛酸なめ子「電車のおじさん」第19回
 なぜ、鈴木先輩と奥野さんは一晩のアバンチュールに至ったのでしょう……。今まで玉恵は鈴木先輩のことをとくに美人だと思ったことはなく、いたって普通の30代女性だと思っていました。若さゆえの傲慢さで、内心
辛酸なめ子「電車のおじさん」第18回
 ラッシュの電車にむりやり乗ってくる人は、次の駅で降りたい人がいるのにどいてくれないことが多いです。玉恵は常々苛立ちを覚えていました。考えるまでもなく、強引に乗り込んでくるマインドの人だからこそ、降り
辛酸なめ子「電車のおじさん」第17回
 人間は辛いときのほうがクリエイティビティが発揮されるのでしょうか。玉恵が、ストーカーじみてきた外山先輩への恐怖から発案した「手放しノート」の企画は意外にも上司からの受けが良く、発売できそうな気配です
辛酸なめ子「電車のおじさん」第16回
 駅を出るとあたりはすっかり暗くなっていて、若いカップルが壁にもたれて立っていました。結構かわいい彼女がコンビニで買ったドリンクを手に持っていて、ストローから「チュルルル……」とかすかな音を立てて一口
辛酸なめ子「電車のおじさん」第15回
 心の奥に満たされないものがあるときは、意味なく洋服屋をはしごしてしまいます。玉恵は最近、帰社する途中わざわざ新宿に遠回りして、駅ビルをあてどなくさまよいがちでした。LUMINEよりも最近はNEWoM
辛酸なめ子「電車のおじさん」第14回
 投票所はおじさんのテリトリーだったのでしょうか。玉恵を喫茶店に誘う姿は、自信を漂わせているように見えました。おしゃれなカフェではなく、駅前の渋い喫茶店に連れて行かれ、主導権はすっかりおじさんにあるよ
辛酸なめ子「電車のおじさん」第13回
 人生のほころびの予兆の一つは、スマホの保護フィルムがはがれることかもしれない……玉恵はめくれあがったフィルムに目をとめて、不穏なものを感じました。ちょうど通勤電車の中で、ポリエステルのシャツの下に白
辛酸なめ子「電車のおじさん」第12回
「鉄観音ウーロン白桃ミルクティーで、Sサイズ、氷なし、タピオカはふつうの量でお願いします」  レジでよどみなくタピオカミルクティーを注文する玉恵。外山先輩は「じゃあここは僕が」と、すっとレジの前に入り
辛酸なめ子「電車のおじさん」第11回
 朝からついていないときってありますよね。些細なことですが、朝食に食べたプチトマトが、はじけて中身が出てしまい、白いブラウスに飛び散って、玉恵は朝から取り返しのつかない思いにかられました。寝起きだと、
辛酸なめ子「電車のおじさん」第10回
「最近どうしたの、何かいいことあったんじゃない?」  鈴木先輩に声をかけられ、玉恵はドキッとしました。 「やっぱりあのローズクオーツの効果があったんじゃない。いいなあどこ産? 私の指輪の石、どうもくす
辛酸なめ子「電車のおじさん」第9回
 ローズクオーツは、女性性を高めるパワーストーン。玉恵は、机の上に置いたピンクの石を、ときどき握りしめることで、何らかのパワーを得ようとしていました。ただでさえ女子力が不足しているので、パワーストーン
辛酸なめ子「電車のおじさん」第8回
 浅草寺のおみくじが凶だったり、電車のおじさんがおばさんと一緒にいたことなどショックなことが続いて、フラついていた玉恵は、道でぶつかりそうになったおじいさんに舌打ちされました。 「もう、浅草は怒りっぽ
辛酸なめ子「電車のおじさん」第7回
「聞いてよ、この前お父さんが倒れて救急車を呼んだり大変だったの」  玉恵は久しぶりに高校時代の同級生、茜を呼び出して近況を聞いてもらいました。前にLINEグループで男性の甲斐性について質問した中の、一
辛酸なめ子「電車のおじさん」第6回
 夕方、駅のホームで電車を待っていた玉恵の耳に、どこからともなく猫の声が聞こえてきました。 「ニャオ~ン」  どこかに猫が? と、猫好きの玉恵は周囲を見回しましたが、バスケットなどを持っている人は半径