キッチンが呼んでる!

◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載第5回
第5話 7日目のサラダバー 「ビュッフェは、『何を食べるか』じゃなくて『何を食べないか』なのよ」サラダバーからとってきたサラダの皿を前にして、友人のアサコが力説している。彼女は同業者で、今日は共通のクライアントの会社からほど近いレストランで待ち合わせた。久しぶりに一緒にランチをする事にしたのだ。この店は、サラダバーとア
◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載第4回
第4話 6日目の電子レンジ 今日は丸一日オフにする、と昨日から決めていた。明日が締め切りの大仕事を昨日の内に片付けた頑張る女にはその権利がある。10時過ぎまでゆっくり寝てから、ブランチをとることにした。昨日のスープの残りを沸かして溶き卵を流したものと、あとトースト。トーストの半分は卵とじスープに浸しながら食べて
◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載第3回
第3話 5日目の小鍋とフライパン 明後日が締め切りのちょっとした大仕事が、昼過ぎにはもう片付いた。今日は良く頑張った。仕事の単価がやや低いのは少々問題だが、それでも私は良く頑張った。そして生活にはメリハリも必要だから、今日はこれから美術館に出かけることに決めた。1週間ぶりのまともな外出だ。
◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載第2回
第2話 4日目の炊飯器 朝ベッドの中で、昨晩ほろ酔い気分でうっかり追加のトーストを焼いてしまったことを少しだけ反省していたら、唐突に母のことを思い出した。子供の頃、トーストを食べるために冷蔵庫からいちごジャムを取り出してきてパンに塗ろうとしたら、姿見の前で出かけ支度をしていた母にいきなり窘められた、そんな思い出だ。
◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載スタート
第1話 3日目のオーブントースター ドアのチャイムが鳴って、宅配便が届いた。配達員さんから受け取ったその真新しい箱を、部屋の隅に積み上がったままの引っ越し用段ボールの一番上に神棚のようにのせると、私はパソコンの前に戻って仕事の続きに取り掛かった。