著者買いするなら次はコレ!

『家族スクランブル』(田丸雅智著)は、これ一冊で様々なタイプの作品が楽しめます。
書店員名前
ジュンク堂書店京都店(京都) 村上沙織さん

『恋と禁忌の述語論理』井上真偽

 過去に遭遇し、すでに名探偵によって解決したはずの殺人事件。大学生の詠彦は天才数理論理学者である叔母、硯に数理論理学を使ってその推理が本当に正しかったのかを検証してほしいと依頼します。

koitokinki
講談社ノベルス 定価:本体960円+税


 探偵たちの推理が分解され、証明されていく様は圧巻の一言。こんな方法があったのかと驚かされました。さらに詠彦が硯に検証を頼んだ理由。それが明らかになったときの衝撃をぜひ味わってもらいたい。数学はちょっと苦手でという人もいるかもしれません。実は私もそうでした。でもそんなことが気にならなくなるくらい面白いです。ちなみに『その可能性はすでに考えた』の上苙探偵も登場しますよ。

『雨の日も神様と相撲を』城平京

 相撲好きの両親の影響で長年相撲をしてきたものの体格に恵まれない文季。彼は両親の死をきっかけに相撲好きのカエルの神様が崇められている村に転校。そこで村を治める一族の娘・真夏と出会い、知識と知恵を見込まれてカエルに相撲を教えることに。

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講談社タイガ 定価:本体720円+税


 さらには隣町でトランクに詰められた死体が発見される。一見かかわりのない二つの出来事は絡み合い思わぬ方向へと進んでいきます。鍵になるのは外来種の赤い小さなカエル。このカエルに勝つために神様カエルたちが相撲の稽古をしている様子は読んでいてとても和みます。そして文季の活躍で事件も解決、相撲の勝負にも決着がつき、真夏をカエルの呪いから助けることもできて一件落着と思いきや、実は大きな見落としが……というのが城平さんらしいところ。最後まで油断なりません。

『家族スクランブル』田丸雅智

 私が田丸さんにハマるきっかけとなった「母の米」という作品が入った一冊。

kazoku
小学館文庫 定価:本体570円+税


 家電量販店でおすすめを尋ねる主人公。この時点では何のコーナーにいるのかわからず、用途は米に使いたい、けど炊飯器を探しているわけでないことが語られます。では一体何を買いに来たのか。考えながら思い出話を読んでいくのですが、最後に答えが明かされたとき、そうきたか! と。ショートショートなのであっさり読めるのですがまさかこれだけの驚きをもたらしてくれるとは。ほかにも家族にまつわる17編を収録。これ一冊で様々なタイプの作品が楽しめます。

 

〈「きらら」2018年7月号掲載〉