ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第130回
漫画新刊の発売が決定した。
センスが終わっている編集者と、
応援してくれた読者のおかげである。
他社の連載作品だが、この度めでたく「8巻」が発売することが決定した。
「明日でちょうど48歳になります」と言われたかのような困惑とリアクションの取りづらさを感じているだろう。
しかし、私には意味のある数字であり、今までの単行本の刊行数記録は「7巻」だったが、それを更新したのである。
ちなみに7巻まで続いたのはデビュー作だ。
私はここで、自分は漫画家としては下の下、それすら芥見下々登場のせいで言いづらくなったどうしてくれる、と再三言っていたが、デビュー作ですらそんなに売れてないのに10年以上それすら抜けていなかったという、思った以上のダメなのである。
しかし、そんな奴が15年ぐらい漫画家を続け、今も続けているという状態に夢があると思って欲しい。
被雇用者の権利が激強な日本ですら「このボンクラが何とか使えるように再三指導し、周囲が粉骨砕身努力したが改善が見込めなかった」となれば、解雇理由になるのだ。
私にまだ漫画の仕事があるというのは、毎回コピーしてくれと渡した書類をシュレッダーにかける事務員に未だに書類を渡す奴がいる、ということだ。
漫画業界というのは、そういう寛容さとチャレンジ精神、そして学ばなさを持っているので、一般企業の枠に収まりきらなかった大器は、漫画を描くべきなのかもしれない。
だが、それを真に受けて漫画を描いた奴がヒットしたら死にきれないので別に描かなくていい。そんな暇があったらインディードにでも登録するか、毎月15日に親を襲撃しろ。
ちなみに何故15日かというと、この業界では常識なので言うまでもないとは思うが、年金支給日だからである。
ともかく、私の売れてないは謙遜でもなんでもなく、数字として本当に売れていないのだが、それでも何故か活動が続いているので、漫画の世界は苦いが甘いところもあるマーマレードボーイ的な一面がある、ということだ。
漫画のみならず、どの業界にも成功と失敗がある。むしろ成功という概念を発生させるにはまず失敗が不可欠なのだ。
これからは、その業界に入って失敗するのではなく、失敗枠に自ら滑り込んでいく時代である。