田島芽瑠の「読メル幸せ」第76回

田島芽瑠の読メル幸せ

第76回


8月になりました🍉

暑い日々が続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか?くれぐれも無理をせず、熱中症に気をつけてお過ごしください。私も珍しく夏バテしたり、今年の暑さにはお手上げです笑。

私は体調は花から、心の状態は本に教えてもらいます。花は上京する時に母に「どんなに忙しくても花を飾りなさい。花がすぐ枯れたりする時は自分の生活に余裕がなかったり体調を崩しやすいから気をつけて。芽瑠が元気だったら花も元気だから」と言われずっと意識して飾っています。花の種類にもよると思うし、花にも寿命はあるけれど確かに体調が不安定な時は花が枯れやすくて、自分の調子がいい時は花も元気なんですよね。不思議と伝わるものがあるのかもしれません。本は心の余裕とか、自分が求めているものを教えてくれます。今の自分はこういうのが読みたいんだって本屋さんに行くたびに発見があって楽しいです。自分でも気付かない自分に出会える素敵な場所ですよね。本は鏡でもあるし、その世界に行ける切符でもある。本もお花も私の毎日を彩り、支えてくれています。皆さんにもそんな存在が1つでも多くできますように。

さて、今月のおすすめする作品は島本理生さんの2020年の恋人たちです。

「読メル幸せ」第76回

2020年ってなんだか色々あった年だよな〜と思って手に取ったのですが、そもそも東京オリンピックで盛り上がっていたはずの年だったのかとこの作品を読みながら思い出しました。あまりにもコロナのイメージが強くて、たった4年前なのにとても懐かしい気持ちになりました。

32歳の女性〝葵〟が主人公のお話です。物語はお母さんが事故にあう事から始まります。決断に責任を持たなきゃいけない年齢。でもそれって誰が決めたのだろうか。仕事、恋愛、家族と色んな選択を迫られる中で葵が選んだものとは。。。

「読メル幸せ」第76回

大人になるにつれ、面倒な事ってどんどん増えていきますよね。10代の時に友達だと思っていた人も、環境が変わると自分自身も周りにも変化が訪れ、それはただの知り合いに過ぎなかったことに気付く。1人で出来ることが増えていく分、誰かを思いやる労力がめんどくさく感じる時もある。葵のため息がそばで聞こえてくるようでした。でも人は1人では生きていけない。どこかで誰かに支えられていて、葵には力になってくれる人たちが側にいた。こんなにも葵に惹かれる人が現れるなんて羨ましいと思いながらも、きっとそれだけ魅力がある方なのだろうと思う。どんな境遇にも負けない、まっすぐな芯がある女性。私自身も人に頼ったりするのが得意ではないし、自分で解決した方が早いと思っているので、そういう自分で進む力、生きる力がある葵に惹かれていきました。

今回の登場人物の中で、葵の叔母の弓子さんと葵が京都の出張で出会った芹さんという女性2人がとても好きでした。叔母の弓子さんは旦那さんとの離婚の危機で急遽一人暮らしを始めるのですが、周りも穏やかに包み込む弓子さんの持つ雰囲気はどんな状況になっても変わらなくて、きっと近くにいたらとても安心感がある素敵な人だろうなと妄想していました。ほわっとしているようで、しっかりしていて、最後の決断には驚きましたがそこが彼女の強さなんですよね。葵に対してかける言葉がどれも素敵で、この人はこうしてこれまでの人生も沢山の人を救ってきたのだろうと思いました。芹さんは登場からインパクトがあって、近くにいたら絶対好きになる女性像で、2人が友達になっていく過程が素敵でした。こんな形の出会いもあるんだなって、芹さんや葵の恋愛を通して思いました。人々の出会いって面白く、今回の作品は本当にあったら素敵だなと思う出会い方が多かった気がします。

「読メル幸せ」第76回

強くなりたい。強くあろうとする人間ほど、実は寂しくて孤独が嫌だったりするんです。1人は平気でも孤独は寂しい。関係が深くなった先にいなくなったり、これまでの好きがなくなったり、裏切られたり嫌いになったり、そういう事で自分が傷つく事が怖いんです。傷つくぐらいならいらないと自分を守ってしまう。だからこそ人を信じて深く関わる事が難しくなっていく。みんなそうやって自分を守る盾を沢山作りながら生きている。人間関係の複雑さと脆さをとても感じた作品でした。皆さんもぜひ読んでみてください。

良い本の旅を。

田島芽瑠でした。

「読メル幸せ」第76回

(次回は2024年9月中旬に更新予定です)


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