◎編集者コラム◎ 『かすがい食堂』伽古屋圭市
◎編集者コラム◎
『かすがい食堂』伽古屋圭市
放課後の子どもたちが集う駄菓子屋さんが、夜には子どもたちのための食堂に!?
小学館文庫での前作『冥土ごはん 洋食店 幽明軒』では、死者が訪れるレストランを描いた伽古屋圭市さんが、本作で舞台にしたのは東京下町の「子ども食堂」です。
食堂の店主は、25歳の楓子。撮影現場での怪我をきっかけに映像業界を離れ、祖母・朝日が営んでいた駄菓子屋「かすがい」を継いだことが始まりでした。
子どもたちから「おばちゃん」と呼ばれることに慣れ、それぞれの名前と顔が一致するようになった頃、夕方に来店してきっちり300円分のお菓子を買って帰る少年の存在に気づきます。駄菓子なら相当の量を購入できる金額ですが、事情を察した楓子は、店の奥にある台所で彼のために食事を作り、提供することを思いつくのです。
食堂を訪れるのは、貧困や摂食障害、イジメなどの理由で食事をとれない状況にある子どものみ。料理が得意なわけではないし、ややおせっかいなところもある楓子が、朝日の助けを借りながら奮闘する日々を描きます。
本書のカバーイラストは、ながしまひろみさん(コミック『鬼の子』、ご存じですか? かわいくて温かくてとても素敵な作品です涙)、カバーデザインは岡本歌織さん(next door design)です。ゲラを読んだお二人から、家族と学校以外に関わってくれる大人がいることの大切さや、さまざまな家庭環境に置かれる子どもたちがいる現状について考えるきっかけとなったという感想をいただきました。物語がゼロのときから作品に携わっていると、読者がどう捉えるのか不安になることがあるのですが、「ちゃんと伝わってる!」と自信に繋がる出来事でした。
ながしまひろみさんが描いてくださったラフは、どれも子どもたちへのやさしい眼差しが感じられ、3つの案からひとつを選ぶのはどれもよくて難しかったのですが、楽しい過程でした。
ながしまさんの許可をいただいたので、イラストラフをお見せしちゃいます。お店の前にある什器の位置や色、全体的に施された夕暮れの色などなど、細やかな配慮から一つのデザインが完成する過程をご覧ください。
──『かすがい食堂』担当者より
『かすがい食堂』
伽古屋圭市