◎編集者コラム◎ 『今読みたい太宰治私小説集』太宰 治

◎編集者コラム◎

『今読みたい太宰治私小説集』太宰 治


小さい頃から大好きだった、老舗の和菓子屋さん。
誰もが「美味しい」と認めながらちょっとイマドキ感には欠けるかな、というおやつ。
たとえば、福砂屋のカステラ。
それが今では「フクサヤキューブ」という、ポップでカラフルなボックスに小分けのカステラを詰めて、おしゃれでカジュアルな
イマドキの手土産に変身したように。

これからもずっと読み継がれていって欲しい昭和文学の名作を
新しい目線での文芸作品として、リニューアル刊行できないかな、と
常日頃から考えていました。
教科書の文学史でしか太宰治を知らない人々にも
もっと身近に感じてもらえる、一冊。
なかでも、私小説集『帰去来』をなんとか形にできないか、と。
文壇デビュー作となった「思い出」を巻頭に、
「富嶽百景」「帰去来」「故郷」「津軽」という
太宰治の人間くさーい私小説五話が収録されている『帰去来』を。

太宰治と言えば、もう何十冊も本になってきている作家。このコロナの閉塞感ある中、若い世代はどう感じるんだろう、
そんな興味もあり、新しい感性の太宰治の読み手として、
現役高校生作家の鈴木るりかさんに初めて解説原稿を依頼しました。
そして、本の印象を決める装画の描き手に、今、若い世代に大人気の
ファンタジックなイラストレーター、六七質さん。
このコラボで、今までにない太宰治の一冊になりました。
タイトルも、超ド直球。

現役受験生でもある鈴木るりかさんが太宰治の文章から、感じ取ったもの。
それは「希望」。
確かに、「希望」をもって生きていきたくて、人間くさくて、みみっちくて、情けなくて、でも愛さずにはいられない、体温を感じるような太宰治がここには存在しているのです。
この一冊をきっかけに、
太宰治や昭和文学の魅力に気づく方が
一人でも増えると嬉しいなあ、と思っております。
良い文芸作品は、いつまでもいつまでも心の中でフェニックスのように蘇る、と
信じています。

──『今読みたい太宰治私小説集』担当者より

今読みたい太宰治私小説集

『今読みたい太宰治私小説集』
太宰 治

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