◎編集者コラム◎ 『食と酒 吉村昭の流儀』谷口桂子
◎編集者コラム◎
『食と酒 吉村昭の流儀』谷口桂子
国民的作家・故吉村昭氏の命日に合わせて刊行された谷口桂子さんの書き下ろし文庫。
吉村氏と夫人で作家の津村節子氏の随筆や小説から、
食に関する印象的で美味しそうな場面を抜き出して、
私たちが愛すべき日本の食と酒を活写します。
吉村氏は執筆に際し、
信じられないほどの徹底した取材をしたことで知られています。
題材になる場所への取材旅行は何度も何度も繰り返され、
そしてその地で見つけた「食と酒」にのめり込んでいきます。
思わず食べたくなる、飲みたくなるその味を、
ぜひ本書で楽しんでください。
さて今回は本書の装丁について、少しお話しをします。
![](https://shosetsu-maru.com/wp-content/uploads/2021/07/yoshimuraakira.png)
アートディレクションは名久井直子さん。
超多忙の名久井さんですが、
小学館の地下スタジオで行われたカバー写真の撮影にも立ち会って、
細かくディレクションをしていただきました。
そして名久井さんご指名で、カバーに使われている作品を制作してくださったのは、
アーティストの平松麻さんです。
酒のつまみの魚や、お店の暖簾、箸や徳利を描いたマッチ箱は
本書の世界観を見事に表しています。
そして平松さんは、偶然にも、吉村昭作品のファンだったのです。
パソコンのデスクトップに
吉村氏の写真を使っていたこともあるという平松さん、
愛情を込めてマッチ箱アートを制作してくださいました。
作品の中に「手」が描かれているものもありますが、
この手は吉村氏の「やさしさ」を描いたものとのことでした。
旅先で想定外の美味しい料理や地酒に出会った経験が、
誰にでもあると思います。
本書のカバーを見ていると、
その時の感動がよみがえるように感じるのは
私だけでしょうか。
──『食と酒 吉村昭の流儀』担当者より