ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2025年12月前半★

12月1日
ベッドでミロをこぼす。考え方ではどうにもならない事もある。
夜にオンライン試写で観た映画が本当につまらなくて途中でやめた。普段は面白い映画を選びに選んで観ていることを思い知る。つまらないものを見るとなんか凹む。いま日記が流行しているのはつまらなくてもOK、なんでもない日だっていいじゃん、みたいな優しい空気があるんだろうけど、普通に、せっかく読むなら面白いに越したことはない。でも自分が日記を書く時のハードルは下げておきたくもある。私は毎日感動したい。私の気持ちはいつもひとつじゃない。
12月2日
昨夜のつまらな映画の続きが夢の中で上映されていた。恋仲の二人が坂道を上るカメラワークが秀逸で、意外と後半は見てられるな、と思ったところでカットが切り替わり、知らんおっさんに私自身が銃口を向けられて金縛りが始まった。身体は動かせない。目を開いても視界がまっくら。散々だった。
デザイナーの友人と月1で美術館へ行く朝活を始める。第1回は恵比寿の東京都写真美術館でペドロ・コスタ展。映画監督の展示に監督作観たことなくても行く自由があんの知ってたか。朝10時集合と伝えようとした昨夜、なぜせっかくフリーランスを選んだ我々が9時台の山手線をさらに混ませる人員になる必要があろうか、人に優しく生きよ、となって10時半集合にした。結果二人とも11時に着いた。
ペドロ・コスタ展『インナーヴィジョンズ』はさすが映画監督の作る展示だからなのか、とにかく展示空間が映画館のように暗かった。『インナーヴィジョンズ』という展示名はスティービー・ワンダーの名盤のタイトルを引用したもので、彼にとって「生きていくなかで私のことを後ろからずっと見守ってくれているものであり、あるいはまた、前に立ってずっと私を先導してくれているものとも言えるだろう……」と述懐していて、歌手としてナイーブな気持ちになれる。暗闇の中に浮かび上がる女性たちの顔、顔、顔。どうしてあんな表情が撮れるんだろう、どうしてあの表情を美術館に展示するべきだとわかったんだろう。
図録を買うか迷ったけど、映像展示の図録のほとんどは、よく考えるとスクショ集である。論考のついたスクショ。QRコードでVimeoに飛ばしてもらえるわけでもない。感動するとミュージアムショップでつい手にとってしまうけど、本当に本当に必要なのか?と熟考する必要がある。ちなみに立ち止まって考えた結果、買うことだってある。あるんかい。
Red Velvetのスルギが食べていた恵比寿のクリームカレーうどんを食べて帰った。
12月3日
水曜はラジオなのでいつも早起き。自分の日記が『GOAT』に掲載されたので、自分の好きな日記本を3冊選ぶ。少年アヤ『少年アヤちゃん焦心日記』、スーザン・ソンタグ『私は生まれなおしている』、Chara『breaking hearts』。Charaさんの本は日記ともエッセイとも詩ともつかない内容だが、名著。私の部屋の本棚が散らかりすぎたのか、誰かに貸したままなのか、その本だけが見つからない。どうしても確認したい箇所がある。まじでどうすんのってなったけど、よく考えたら友達も持っている。手当たり次第に呼びかけたら綿貫大介さんが該当箇所の写メを送ってくれた。さらに、身の回りにはこの書籍を所有している人が私を含めて5名もいることが発覚した。綿貫さん、首藤凜さん、ラブリーサマーちゃん、さらさちゃん。みんなの本棚に「何でから揚げ食べて泣かなくちゃいけないのかわからない」と痛切に綴るCharaさんの心の切れ端がちゃんと挟まったままということだ。せつねえよ。ベストセラーかよ。BUTTERかよ。
帰宅。作詞ができない。デスクにいても横になっても、体全体が強張っているのを感じる。何も書けずにただ血行が悪くなる。小説家の町屋良平さんは芥川賞受賞作はほとんど風呂に入って書いたのだと言っていた。身体があったまって血行がよくなると頭が回るからアイデアが浮かぶ。今の私はその方法を盲信すべきだ。
なんか最近の自分は文句ばっかり言ってる気がする。でも私は面白かったら面白いって言うし、素晴らしかったら素晴らしいって言うよなあ。だから、つまんないものが多いってことなんだ。最悪だ。と思ってたらなんか笑えてきた。
12月4日
電動歯ブラシの充電が切れていて、どうにかする余裕がなく、ただ少し大きくて少し重い歯ブラシをゴシゴシと動かして磨く人になった。手動の電動歯ブラシ。何をやってんだ自分は。ここにあるのは出来事そのものだけで、象徴でも意味でも教訓でも縮図でもない。ってことを頻繁に意識するけどそれが私なりのセルフケアなのか?
昨夜急に吉澤嘉代子さんから連絡があって珍しくて嬉しかった。友人と集まってそれぞれの宿題をやる会に誘われたので表参道に向かったところ自分が一番乗りで、そんな状況はなかなかない。そんな状況がなかなかない人生は、反省に値する。反省というか、感謝。
集合場所の喫茶店が混雑していたので、他にどこあるかなーと外に出ると、私の遠い目線の先の奥のその先には見覚えのある建物があった。「あー、青学の食堂って、誰でも入れますよ」と嘉代子をそそのかす。母校に入るのは久しぶりだった。17号館1階の食堂。いわゆるイチナナ。ここで昼休みに席を取ってランチを食べられるのは、青学の真ん中にいるような子たち。サー席と呼ばれる、特定のサークルが確保している座席群とかあるから。昼休みが終わって3限が始まっている時間だったので、席は確保できた。大学生に囲まれながら大の大人たちが作業を開始。途中から写真家の平木希奈さんと編集者の野村由芽さんも集まって、食堂のテーブルを四つの椅子で囲み、私のタイミングで私語休憩を挟みつつ、それぞれの作業を進める。作詞って友達と集まっている状態で集中して遂行できることなのか謎だったけど、結局やるしかないという環境が功を奏したのだろう、どんどん書けてフルコーラス出来上がった。内容は見せてないけど、作業が進んだこと自体を褒め合う。それぞれやるべきことができたらしい。家で一人じゃできないことが多すぎる。食堂の入り口付近にピアノが置かれていて、5限が終わると、金管楽器を持った人々が集まってきてアンサンブルが始まった。聴いたことあるメロディーだけど曲名が思い出せない。演奏者は友人たちに囲まれて動画に残されている。
指を差して、そう、あれは名物、青山学院の中庭のクリスマスツリーのイルミネーション。いつ見ても大きいなあ。あの煌めきを見て「見て……学費が光ってる……」と呟くのがここの学生の冬の習慣である。私のカメラロールを遡れば、在籍時7年分の、7枚のクリスマスツリーフォトが見つけ出せるのかな? 可愛いものには目がないはずだが。
12月5日
テレビをつけてすぐ「この人たち全員仕事頑張ってるんだ」と気づいてやるせなくなってテレビを消したことがあるのを思い出して寝た。
12月6日
メロディーが先にある曲の作詞をした場合、歌詞をどうメロディーに乗せるのか当てはめるのか(いわゆる譜割)を伝えるために、仮歌未満の歌入れデータを送る必要がある。これを私は仮仮歌と呼んでいる。いまだにDTMとかわかんないし家はまともに歌を録音できる環境でもないので、必殺限界ボイスメモと爆裂気合 GarageBand でなんとかするしかない。仮仮歌を作成して送信しなければいけないはずの午前中だった。予定を遅らせたのに仮仮歌に取り組めずに昼の予定へ向かう。来年は DTM 環境を整えて、仕事を頼みやすい作詞家になりたい。
宣言通りゼロ年代後半のようなファッションで友人が待っていた。流行っていないリバイバル。背が高くて姿勢が悪くて脚が長くて見つけやすい。私は早稲田に来るのは初めてで、友人は受験したらしい。たしかにぽさがある。早稲田国際文学館/村上春樹ライブラリーで「黒人女性の文学とジャズ展─ブラック・フェミニズムをたどる」を見たあと、正門の前の看板でどうしても気になってしまった「北大路欣也展」を開催中の早稲田演劇博物館に向かう。けれども北大路の展示が見つからなくて1階から3階まで、演劇博物館の特別展も常設展も気付けば全て見てしまった。ラックに入ったフライヤーも確認した。最後にたどり着いた展示室がやっと「北大路欣也展」だった。様々な展示を見た30分弱の内実は、北大路欣也を探す冒険だった。おでかけを超えて、旅を超えて、冒険だった。
急いで帰宅して仮仮歌を作成し、部屋を無理やり片付けてYouTube「DIVAと私語しよ?」の撮影。柚木麻子さんと通話した。これからはネットではなくラックをチェックして郷土資料館やワークショップの情報を能動的にゲットしていくと決意。入場無料の展示をいかに本気で見ていけるか。私たちは「プラザ」や「スクエア」や「○○とぴあ」ってネーミングの施設に意欲を試されてる。柚木さんと話しすぎて疲れたことは何度もあるけど、話して元気が出なかったことは、一度もない。
12月7日
プライベート・スーパースター君島大空が二度寝してくれてたことにより、コンビニで納税をし、ブックファースト新宿店に行き、珈琲ピースに入ってバーチカルタイプのスケジュール帳に向こう数週間の予定を書き入れ、自分を取り戻すための光り輝く時間を過ごす体験ができた。新鮮な朝の使い方が嬉しい。そうして私がただ輝いているなか、二度寝を謝罪する連絡が君島から届き、「ありがとう」と心の底から送信した。ビビッドな色の封筒を二度と見ないでいられますように。
グリーン車は2階のほうに乗る。二人でゆっくり話すのも久しぶりかも。アーツ前橋で開催されている展覧会「Ghost」に行くのが目的だった。君島くんの人生や創作のテーマに近い展示だと思ったから、休暇へと連れ出すように誘った。駅に着いて、ローカルレストラン・シャンゴまで歩く。「シャンゴ風」というミートソーススパゲッティの上に大きなトンカツが載せられた、わんぱくな料理を食べた。
アーツ前橋。大野一雄の舞踏映像の上映エリアで、一人の女性らしき人がすでに作品を鑑賞していた。君島はその横に座ってスクリーンを眺め始める。ちょっとまってくれ。二人の見つめる先には白い壁しかなく、私の目には作品や映像や大野一雄らしきものが何も見えていない。私だけが鈍感で何も感受できていないのかと怖くなる。二人には何かが見えている? それでも目を凝らしながら自分の感性の限界を身につまされていたら、光る大野一雄の姿が出てきて普通に映像が始まった。ガチ安心したけどあのお姉さんには最初から何かが見えていた可能性も拭いきれない。
美術館の目の前にある区役所崩れ系プラザ「元気21」のラックでチラシをたくさんもらった。いいラックにいいチラシ。近くのオシャレホテルに施された〝アート〟が、街おこしアートにあるあるな、小さな液晶を植物の上などにたくさん点在させるやつで、自分が写真を撮っても、他人がインスタに載せたものを見てるみたいだった。
最後には住宅街に唐突に現れるUFOみたいな建築(FUTURO)を見に行った。建築学校の駐車場にUFOがあって、隣には普通に車が停められてる。あまりにも自然に設置されているため、宇宙人との共生を描いた架空漫画原作の架空ほっこり深夜ドラマ『宇宙さんと私』あるいは『宇宙のあさごはん』を想像してしまい、架空劇中セリフを君島に語り続けた。佇まいにびっくりして同じ写真を撮るばっかりしてしまったが、シャッター音は拍手だから止まらない。満月に近い月のせいか、街灯のせいか、街が平面絵画のように見える瞬間がいくつかあり、不思議な夜だった。来年も一緒に頑張ってくれる星があることのありがたさ嚙み締めながら帰る。私も星。
12月8日
YouTube第一弾として自己紹介動画を投稿。思ったより反応があって安心。
他人にがっかりされることをいつも恐れてる。
12月9日
先日、フリマを開催した。服と本を主に販売し、50冊くらい持っていった本はすぐに完売した。読むことを諦めた積読本がほとんどだったけど、ファンの人たちはもちろんゆっきゅんが読んだ本、もはや愛読書かのように勘違いして、大切そうに選び抜いて買ってくれた。若干の罪悪感があったけど、読んでないんですよ!なんて、大声で言うことでもない。
今日エゴサをしていたら、読まずに売った石井まゆみの短編「情熱に届かない」について感想を見つけた。「これ、ゆっきゅんの歌の歌すぎる!」と賞賛されていた。読んでいないから内容知らない。でも、そんなに面白いのか……ゆっきゅんの歌すぎるのか……と気になってきて、今日、改めて石井まゆみ『情熱に届かない』を注文してしまった。バカか。
12月10日
文化放送で10月から毎週お目にかかっている大竹まことさん。大竹さんは私が水曜後半レギュラーの「武田砂鉄ラジオマガジン」の後の「大竹まことゴールデンラジオ!」に出演している。挨拶をさせてもらったり(芸能人の挨拶とかわかってないです普通のおはようございますです)、ラジオマガジンの終わりに乱入してきたり、くらいの繫がりはあったけど特に二人間の交流はなかった。
その大竹まことさんが遠いテーブルの向こうからこちらに向かって歩いてくる。喫煙かトイレか何か……いや、私に向かって歩いてきている。テーブルを挟んで目の前に大竹さんが来た。立ち上がって、その日忘れていたかもしれない挨拶をしたけど、大竹さんは伝えたいことがある様子だった。「あの、本当に申し訳ないんだが、君は誰なんだ」と言った。
2ヶ月間、私は突然現れた謎のピンク髪で、武田砂鉄さんやいとうあさこさんと仲良さそうにしており、何度考えてもとにかく誰なのかわからなかったのだろう。そこには「お前誰なんだよ笑」という、無名の若手を安易に貶すような含みやいじりのニュアンスは一切なかった。名前と職業を申し上げたが、ゆっきゅんです歌手ですと言ったって、納得させられるわけもない。
大竹さんは「こんなこと聞いていいのかわからないんだが、君は、LGBTQなのか」と続けた。なんかほっこりしてワロタ。LGBTQという語句の使い方は間違っているし、他人に聞いてはいけないし、大竹さん以外に言われてたらほっこりしない。でも変わりゆく時代の価値観に自力でアップデートしようと試みた結果「君は、LGBTQなのか」になったんだろうと思うと、その大竹さんなりの最大の配慮を感じて、愛らしい人だな……と思ってたらすぐ私の本番時間がきた。
12月11日
『情熱に届かない』が面白かったので石井まゆみの漫画をまとめ買い。故事成語になりそう。
12月12日
ギリギリでなんとかなることを成功体験って認識しているのがよくないですよね、と言われて、健常な感覚では、「色々あったけどなんとかなった」は成功ではなく、「色々あってやばかった」の失敗だったのかと衝撃を受けた。今日もジタバタしたけどやっぱり新幹線にはなんとか乗れた。私はいつもなんとかなる。逆にルアンちゃんがスマートパスEXの番号のバグか何かで乗れなくて、相手が乗れないパターンもあるんだと学んだ。
12月13日
ルアンちゃん早起きしすぎて朝からメイク完了しとる。ビジホの朝食好き。
大阪・グランドサロン十三でライブ。今もキャバレーとして営業している豪華絢爛で特殊な会場が華々しい「ハッピーエンド」にぴったり。ただしここにはライブ用の照明器具がなくて暗転が出来ず、舞台袖もなくハケられないので、東京公演用の台本通りには表現できない部分もある。だからこそ特別に考えた演出や動線でここでしか見せられないライブをやりたかった。更衣室兼メイクルームを二つ仕切って簡易的に作ってくれてたけど、二人ともそこを使わずに二人でいた。準備をしながら槇原敬之の『もう恋なんてしない』を二人で歌詞を見ずに歌った。
ほぼ初披露になった楽曲が4つもあって緊張したけど、どれも楽しむことができた。ディレクターの長田さんは9年間、本番前は欠かさずメンバー二人に向かって「それじゃ、楽しんで!」と声をかけた。私たちにとっては当たり前の声かけ(でも儀礼ではなく本心だと伝わる)だったが、周りのアイドルには驚かれることもあった。楽しむことは簡単ではない。緊張感の中で楽しさに辿り着くには、準備と練習と場数が大切だ。メンバーの二人は本番前に舞台袖で手を重ねて「がんばルア〜ン」って気の抜けた声で唱えるのが習慣だったけど、今日はなぜか忘れちゃってた。
12月14日
外は寒くてつまらなさそうだけど部屋の中も頭の中さえもつまらない日だった。
大切な一日にできなかった日、さよなら!
(次回は2月26日に公開予定です)
DIVA・作詞家 1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2016年、ルアンとのサントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」を結成。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。アーティストとして楽曲を発表するほか、作詞提供、コラムや映画評の執筆など活躍の幅を広げている。アルバムに『DIVA YOU』『生まれ変わらないあなたを』、最新EPは『OVER THE AURORA』。文化放送「武田砂鉄 ラジオマガジン」水曜後半レギュラー。
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