◎編集者コラム◎ 『前科者』涌井 学 脚本/岸 善幸 原作/香川まさひと、月島冬二

◎編集者コラム◎

『前科者』涌井 学 脚本/岸 善幸 原作/香川まさひと、月島冬二


前科者文庫とポスター写真

 WOWOW 連続ドラマが11月に放送され、来年1月28日からは映画が公開される「前科者」は、「ビッグコミックオリジナル」に連載された人気コミックを原作にした話題作。ドラマも映画も、主演は有村架純さんです。眼鏡をかけた有村さんの映画ポスターや画像を目にしたことがある方も、多いのではないでしょうか。

 

 今作の主人公・阿川佳代は、「保護司」という仕事につく女性です。保護司は、前科者の社会復帰を支援する役割を担うのですが、ノーギャラだというから驚きます。必死に前科者と向き合い奮闘する佳代には、それでも「保護司」を続けるだけの強い想いがありました。森田剛さん演じる殺人を犯した前科者・工藤誠は、誠実な勤務態度で勤務先からの評価も高く、佳代とも徐々に心を通わせていきます。ところがあるとき事件が起き、工藤は忽然と姿を消してしまうのです……。

 

 好評発売中の小学館文庫『前科者』は、映画「前科者」のノベライズ作品です。あらすじやキャスト詳細は映画の公式サイトを観ていただくことにして、今回は編集者コラムということで、本書に携わってくださったスタッフのエピソードについて書こうと思います。

 

 本書の校正を担当してくれた女性は、いつも編集部一同大変お世話になっている方です。いつものようにお仕事の依頼をしたところ、今回は「気になっていた作品です!!」と、いつも以上に熱いお返事が届きました。さらに「注目は石橋静河さんです!」とおっしゃいます。うっかりお名前と顔がすぐに結びつかなかったのですが、調べてみると人気ドラマ「大豆田とわ子と3人の元夫」でも猛烈な存在感をはなっていた、あの美しい女優さんじゃないですか! 校正さん、なかなかのドラマ・映画好きとみました。

 石橋さんは佳代の保護観察対象者の一人・斉藤みどりという女性の役で出演されているのですが、佳代の心の支えになる重要な役どころでもあります。「大豆田〜」のときとは印象がガラッと異なり、演技の幅広さに感嘆してしまいました。みなさんもぜひ、注目してみてください。

 

 もうお一方は、本書の執筆をしてくださった著者の涌井学さんです。涌井さんはこれまでも数々のノベライズ作品をご執筆されていて、私も何冊かご一緒させていただきました。直近だと『オッドタクシー』のノベライズを書かれましたが、このノベライズが読者に大好評。アニメファンの方からも「オリジナルエピソードがすごい」などといった反響がたくさん届きました。涌井さんは、作品ごとに違う人が書いたのではと思うほど、世界観の書き分けが凄まじく、原作となる作品の真髄を余すことなく落とし込んでいかれるすごい方。初稿を読んだときには、いつも思わずうなってしまうのです。

 今回も例に漏れず素晴らしい原稿が届き、映画関係者や原作担当者からも大絶賛の声。「素晴らしい作品に仕上げてくださりありがとうございます!」という言葉をいただくことができました。担当編集者として嬉しく感じる、ノベライズ特有の瞬間です。

 

 カバーと帯には映画ビジュアルを用い、有村さんと森田さんのお顔が目印になっています。書店へ出かけられる際は、手にとってみてください。

 映画の副菜としても、もちろん主菜としても、最高に楽しみ、考えさせられ、感動できる1冊になっています! 私は映画でもノベライズでも、ボロボロ泣いてしまいました(涙もろい……)。ハンカチを片手に、ぜひお楽しみいただければと思います。

──『前科者』担当者より

前科者

『前科者』
涌井 学 脚本/岸 善幸
原作/香川まさひと、月島冬二

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