◎編集者コラム◎ 『あの日に亡くなるあなたへ』藤ノ木 優

◎編集者コラム◎

『あの日に亡くなるあなたへ』藤ノ木 優


「あの日に亡くなるあなたへ」見本完成
左が最初期の校正刷りで、右が完成版。イラストレーターの中村至宏さんが描かれた太陽光の美しさを再現するため、色味や光の加減を調整していきました。

 小学館文庫2022年8月刊『あの日に亡くなるあなたへ』の編集者コラムをご覧いただきありがとうございます。本作の編集業務を担当させていただきましたA田と申します。
 本コラムを執筆している7月末現在、関東では急に猛烈な雨が降るなど天気が安定しない日々が続いていますが、実は本作、偶然にもこの「雨」が重要なキーワードになっていたりします。

 ということで、本作のあらすじをざっと紹介させていただきますと――。
 主人公は大学病院に勤務する若き産婦人科医・草壁春翔。春翔は幼い頃に妊娠中の母が目の前で倒れ、何もできずに亡くなってしまったことをずっと後悔していました。そして、ある雨の日、春翔は実家の一室で母のPHSが鳴っていることに気づきます。
 不思議に思いながらも出てみると、なんとPHSからは亡くなった母の声が! そう、このPHSは雨の日にだけ生前の母と繋がる、奇跡の電話だったのです。さらに春翔は過去を変えることで未来をも変えることができると突き止め、この不思議な電話だけを頼りに、今度こそ母を助けてみせると決意するのですが……。

 というようなお話になっています! そう、この「雨の日にしか繋がらない」というのが本作の重要なハラハラ・ドキドキポイントの一つ。母が亡くなると分かっている日まで、雨が降る予報の日はたくさんあるわけではなく、さらにどちらか片方だけではなく、過去と現在、両方の時代で雨が降らないと、電話は繋がらないのです。
 ただでさえ手段が限られた中、その電話が繋がるチャンスまで限られているという悪条件の中(さらにさらに、実は通話時間にも制限があったりします!)、はたして春翔はどうやって過去を変えるのか……。ラストには現役医師でもある藤ノ木先生だからこそ描ける驚きの結末があり、必読です!

 また、イラストレーターの中村至宏さんが描き下ろしてくださったカバーイラストですが、最後まで読み終わると、このイラストに秘められた意味や構図の意図がはっきりと分かり、涙せずにはおられず……。読後、二度読みならぬ二度見必至のイラストとなっているので、ぜひ、こちらにもご注目ください! 
 以上、最後までお読みいただきありがとうございました! 『あの日に亡くなるあなたへ』、ぜひよろしくお願いいたします!

──『あの日に亡くなるあなたへ』担当者より

あの日に亡くなるあなたへ

『あの日に亡くなるあなたへ』
藤ノ木 優

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