ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第89回
大ブレイク中の
AIお絵描きツールを
自分でも試してみた。
近い将来人間の仕事はAIに奪われるらしい。
そんなものはくれてやれとしか思わないが、どうやら「AIに仕事を奪われ、お前らは餓死する」という脅しの意味らしい。
そうだとしたら、人間が困ったことになるとすでに予想されているものを何故一生懸命開発しているのか。
人間の仕事がなくなるということはそれだけ税金の世話になる人間が増えるということであり、それを理由にまた増税され全員が困るだけである。
もしかしたらAIというのはA(人間全員)I(困らせシステム)の略だったのだろうか。
何も略になってないが、この意図不明行動から導き出される答えは、世界を一部の優秀な人間とAIのみで支配し、あとは抹殺する、という計画である。
こんなことをしている暇があるなら、AIにも通じる命乞い方法を研究した方が良いのかもしれない。
しかし、優秀で思慮深い人間だけ残すと「一人前になるのに20年以上の時と膨大な金がかかり、さらにこちらの言うことを聞くとも限らないコスパ最悪の無能生物を生み出すよりAIを使った方がいい」と結論になってしまい、出生率はゼロ、人間は結局絶滅すると思う。
優秀な人間だけでなく、勢いだけで生きている迂闊な人間もいたから人間はこれだけ増えて栄えたのである。
しかし、歴史の流れの中でテクノロジーの進化により、苦労して身につけた技術が機械で誰でもできるようになり、仕事がなくなるという不幸に見舞われた人間がいたのは事実だ。
奪われるまで行かなくても、昔漫画のベタを手塗りし集中線を1本1本描いていた人間は現在それがクリック一つでできる現状に憤死しているのかもしれない。
今自分がやっている仕事も数年後にはAIに奪われ、自分はその横で「AIパイセンさすがっス!」とスタバのタンブラーに入った機械油をAIに差し出す係になっているかもしれないのだ。
そして、これを書いている今まさにAIを使ったお絵描きツールがネット上で大ブレイクしている最中だ。
その画力は非常に高く、この世から「画業」をAIに奪われる未来は本当にやってくるのかもしれない。
幸い私は苦労して高い画力を身につけた人間ではないので「俺の苦労がAIごときに一瞬で」という悔しさはない。
最初から苦労を徹底的に避けておけば「苦労が無駄になった」という虚しさで心が折れることはないのだ。
「若い頃の苦労は買ってでもしろ」などというが、今の世の中、若い頃苦労してやっていたことは10年も経たないうちにボタン一つでできるようになっていたりするのである。
逆に「若い頃にあんな無駄な苦労をせずにヤリサーとかに入れば良かった」という後悔を生むだけである。
食洗機は甘え、ポテサラぐらい自分で作れ老など、新しい技術に対する反発の根底には「俺が苦労したのにお前は楽してずるい」という嫉妬が少なからずある。
ならば「お前も苦労しろ」ではなく「俺様も楽する」側に回った方が前向きだ。
よってAI画家の登場に一瞬怯んだが、すぐに「これを使って楽をできないか」と考えるようになった。
ネット上の自動で着彩してくれるツールを使い、なんとか己のカラー原稿を完成させられないかと奮闘したことがあるこの俺だ。AIの方が上手いならAIに描かせて自分は楽をしたい。