◎編集者コラム◎ 『銀座「四宝堂」文房具店』上田健次
◎編集者コラム◎
『銀座「四宝堂」文房具店』上田健次
『銀座「四宝堂」文房具店』の編集者コラムをご覧いただき、ありがとうございます。本作の編集業務を担当させていただきましたA田と申します。
読んで字のごとく、本作は銀座のとある文房具店を舞台にした物語となっています。
前作『テッパン』のご執筆後、「次はどんな作品を作りましょうか」と著者の上田健次先生と話していたところ、「読書が好きなかたって、文房具も好きな人が多い気がするんですよね」というアイディアをいただきました。
思えば、書籍と一緒に文房具を販売する書店様も多いわけですから、文房具と本、どちらも好きという人が多くいることもうなずけます。このアイディアにのらない手はないと、新作は文房具店を題材にした小説にすることが決まりました。
こうして、まずは舞台となる「四宝堂」という文房具店が誕生したのです。さらにそこからどんな特徴がある店にしましょうかという話の中で「2階がワークショップスペースになっていて、手紙が書ける店なんてどうでしょうか」と、これまた上田先生のアイディアが冴えわたり、舞台が整っていきました。
もちろん、とんとん拍子にうまくいく、だけではありませんでした。たとえば、当初は上記の「手紙を書く」ことに、よりフォーカスされた物語案になっていました。
ただ、そうなるとどうしても扱える「文房具」の種類が限られます。「文房具が好きなかたに楽しんでいただくのならば、より多種多様な文房具に光をあてたほうがよいのではないか」。そうした必要な回り道を経て、様々なお客様が十人十色の思い出の文房具を携えやってくるという本作の骨子が出来上がっていったのです。
作品の構想を話し合いはじめたのが昨年の初夏のことでしたので、ここまで足掛け1年以上、ようやく発売を迎えられました。
書籍の帯にも掲載されていますが、いち早く作品を読んでくださった読者のかたからは、「文房具が好きな人にぜひ読んで欲しい一冊」「文房具ならではの良さを再確認できる物語」と、早速ありがたい感想をいただくことができました。
モンブランさんの万年筆から、コクヨさんのキャンパスノートまで。本作には思い出の文房具として、実在の文房具が多数登場します。読後、面白いと感じていただけましたら、ぜひ、皆さまの思い出やお気に入りの文房具を使い、本作の感想を書いていただければ、これほど嬉しいことはありません。
え? 感想文を書くなんてハードルが高い? そんな時は作中に登場する「四宝堂」店主・宝田硯(たからだ けん)のこんなセリフを思い出してみてください。
「まずは頭に浮かんだ言葉や文字をどんどん書き出すことをお勧めします。文章としての組み立ては、その後に考えれば良いかと。ああっ、間違ったとか、違うなと思った箇所は一本線で消すと良いですよ。あとで『やっぱり、あれ、使いたいな』と思った時に、読み返すことができるようにしておくことが大切です。ノートは御本人以外が目にすることはありませんから、丁寧に書く必要はないと思います。とにかく、頭に浮かんだ言葉をどんどん書き出す。それが大切です」
いかがでしょうか、これなら書ける気がしませんか? 効果は抜群だと思いますよ。何をかくそう、〆切をとっくにすぎ、何を書こうか、うんうん唸っていた私が今、おかげで執筆を終えようとしているのですから。
『銀座「四宝堂」文房具店』、引き続きご注目のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
──『銀座「四宝堂」文房具店』担当者より
『銀座「四宝堂」文房具店』
上田健次