◎編集者コラム◎ 『警官は吠えない』池田久輝
◎編集者コラム◎
『警官は吠えない』池田久輝
この夏、小学館文庫に初登場いただいた池田久輝先生は、新進気鋭のハードボイルド作家で、かつ、今では数少ない、文体で読ませる作家のうちのひとり。
2013年、『晩夏光』で第5回角川春樹小説新人賞を受賞、華々しいデビューを飾ると、17年には、「影」で第70回日本推理作家協会賞短編部門候補となりました。
デビュー作『晩夏光』、そして続く『枯野光』どちらの作品も、香港の裏社会を舞台にした物語ですが、本作は京都の裏社会に元刑事が関わる物語です。
ちなみに、京都を舞台にした池田作品は、『まるたけえびすに、武将が通る。 京都甘辛事件簿』(幻冬舎文庫)、『ステイ・ゴールド』(双葉文庫)、『沈黙の誓い crossing』(ハルキ文庫)があるのですが、それは先生のご出身ご在住が京都だから。
さて、バディ警察小説としても十分楽しめる本作は、主人公の村瀬と京都左京署時代にコンビを組んでいた柳との関係に注目ですが、飼い犬であるラブラドール・レトリバーの「ナイン」と村瀬との関係も大注目。村瀬・柳コンビより、ナインの方が人気が出そうなくらい、かわいいのです。ナインの獅子奮迅の働きにご期待あれ。
また、京都ならではの「あるもの」を題材にしている本作ですが、まさかその「あるもの」にまで、反社会的勢力が絡んでいるのかと衝撃を受けること間違いなし。
もちろん、フィクションですから現実とは違うにしても、池田先生の手にかかれば、リアル感マシマシとなって、あっという間に物語に引き込まれるはず。
特に、なにやら村瀬と因縁のある、反社組織ナンバー2の阿佐井が謎めいていて気になる存在。敵か味方かよく分からないのですが、とにかくニヒルで格好いい。
そんな読みどころ満載の『警官は吠えない』の作者である池田先生は、執筆活動の傍ら、池田長十名義で、朗読ユニット「グラス・マーケッツ」の脚本・演出家としてもご活躍されているので、ぜひそちらも覗いてみてください。
──『警官は吠えない』担当者より