田島芽瑠の「読メル幸せ」第64回
第64回
8月になりました🌕
「夏ってこんなに暑かったっけ?」と毎日問いかけながら過ごす日々。みなさん体調は大丈夫ですか?
熱中症には充分お気をつけください。
先日、映画館にて『君たちはどう生きるか』を鑑賞してきました。音、声、作画、全てに〝ジブリ〟が詰まっていて、ジブリ作品が大好きな私にとって幸せすぎる時間でした。ジブリ映画は私が物心ついた時にはすでに出来上がっていた作品が多く、映画館で観られる機会が貴重なんですよね。だからこそ観られる作品は必ず映画館で観るようにしています。色んな感想が飛び交っていますが、私は率直に面白かったなと思いました☺️何度も観たいと思うくらい、すごく好きな作品です。
さて今回ご紹介する作品は、よしもとばななさん作『さきちゃんたちの夜』です。
名前は同じでも、それぞれ生き方や人生が全く違う〝さきちゃん〟を描いた短編集です。〝さきちゃん〟たちに共感したり、その考え方いいなと勉強になることもあって、改めて今を見つめるきっかけになるようなお話です。
悲しいニュースが多かったり、暑さも相俟って疲れやすかったり……そんな息苦しさを感じやすい毎日を過ごす私たちを包み込んでくれるような、優しさを感じる作品ばかりでした。どの〝さきちゃん〟も私達と同じように生きているからこそ、言葉が核心をついてきてハッとさせられる。特に、毎週火曜日から金曜日まで時間をかけて豆スープを煮込んでは土曜日と日曜日に無料で配るという祖父母の行いを通して、人間ってなんだろう?と考えるさきちゃんのお話〝癒しの豆スープ〟の
あまりにも世界は広いから、私にとってどうでもいい人たちも、それぞれにその人をどうでもいいと思わない人がいる。そして私にとってどうでもいい人の中に、やがてどうでもよくなくなる人がでてくるかもしれない。
という言葉がとても好きでした。どこの誰かわからない人も誰かの大切な人だと再認識しました。こんな考え方をみんなができればもっとより良い社会になる気がします。
また、兄を亡くしたさきちゃんの元へ父を亡くした姪っ子のさきちゃんが家出をしてくることから始まる〝さきちゃんたちの夜〟の
また夏が終わっていく。すいかにはもう一年間会えないだろう、突然にお金が入ってきてあったかいベトナムにでも行かない限り。それでも来年になればまたあたりまえにすいかを私は食べているのだろう。肉体があるかぎり。兄がいなくなろうと、いつか母がなくなろうと、変わらず。
という言葉が妙に頭から離れなくて、すごく言葉選びが好きな作品だなと思いました。
さきちゃん達の言葉一つ一つが印象に残るものばかりで心に響きます。
当たり前に思えるようなことでも文字にして読むと改めて考える機会になって、日常の大事なことに気付かされました。
この間、久しぶりにランチした友達と「もうあれから一年経ったの?なんか何もしてないな~」なんて他愛もない話をしたのですが、この作品を読みながらその会話を思い出しました。私自身一年で何も変わってない気もするけど、でも一年前の私はもういなくて確実に変化していて、そして一年後にはまた変化している私がいる。私は私だよなって思えて勇気づけられる作品でした。
人それぞれ価値観が違うこの世界で私たちはどう生きるのか。この作品には人間の難しさも愚かさも詰まっていて、昨今問題視されているSNSでの人の在り方についても考えさせられた。きっと今の世の中に必要な一冊だと私は強く感じました。全ての皆様におすすめです。ぜひ。
良い本の旅を。田島芽瑠でした。
(次回は2023年9月中旬に更新予定です)