みんなのレビュー >>>『鍬ヶ崎心中』


kituneさん ★★★

幕末期、東北の港町で、急激に変貌する時代の中で、出会う男女の織りなす物語。旧幕府軍の中で、戦いの中で、傷つき愛する人さえも失い、自分の存在価値に不安を覚えながら、鍬ヶ崎で、与えられたら役目に命を掛け、此処を死に場所、死して愛する人の元へ行かんと思う男。遊廓に身を落とし、ただ年季が、明けることを夢見た女。偶然が、二人を出会わせ、世を、時代をはかなんだ2人にが、紆余曲折ほのかな恋の炎を灯す。
厭世観にどっぷり浸かっていた二人が、少しづつ距離縮める。鍬ヶ崎の街人も、旧幕府軍を支持する気持ちから、いつの間にか2人を守る気持ちに。しかし、時代は、容赦なく2人に、更なる荒波を浴びせる。二人が、お互いの愛する気持ちに、気づくのが先なのか、
別れが先にくるのか。時は立ち止まることを許さず、二人を、戦いの渦の中に巻き込んでいく。2人を待ち受けるのは、生か死か。この儚い愛の行方は、最後までわからない。時代に抗うこともできず、流されたどり着いた鍬ヶ崎そこさえも追われる二人に、なにが待つのか。
宮古市鍬ヶ崎という街に、2人にあいに、行ってみたくなりました。


もちぬこさん ★★★★★

地獄から抜け出すチャンスを地獄を見た男の中に見いだす事になる千代菊。一緒に隠れ家生活を続けるうちに今まで思ったこともない自分の心の動きに戸惑いながらも純粋な部分に気付き変わってゆく。
明治維新前後の激しい流れに愛は抗えるのか?


ayumiさん ★★★

 本作は「君を守るために死ぬ」と「君を守るために生きる」のどちらを選ぶか、という物語だと思いました。和麿は前者、菊千代は後者でしょうか。和麿の苦しみは「誰も守れず、死ねなかった」というところに根ざしていますが、菊千代はもっと泥臭く「生」を求めます。終盤、生死の境で過去の死人を思い出さなかった和麿は、「生」を希求する菊千代に救われたといえるのではないでしょうか。この結末によって、本作は「死」で人の思いの深さを表す時代から、「生」の重みを尊重する時代への転換を表しているように思われます。単純な惚れた腫れたの物語ではなく、時代の転換期に「生」と「死」のもつ役割までもが変貌してゆくという、人間観の大きな変化を描いた物語であると感じました。震災を経たいま、鍬ヶ崎での「生」と「死」はふたたびどのように転換し、私たちはそれにどのように向き合うべきなのでしょうか。いつか実際に足を運んでみたいです。
 ただ、本作のような時代小説の醍醐味のひとつは、何年にも渡って積み重ねた複雑な感情が一太刀で救われるような気持ちのよさにあると思っています。その点本作は少し物足りず、菊千代のクライマックスに向かう恋心を、女郎屋で受けた長年の仕打ちや和麿との細かいエピソードなど背景をもう少し丁寧に描いて、もっと「報われた」感じを盛り上げてもらいたかったなと思います。本作はいつの間にか和麿のことを好きになっていた、という感じで、あまり感情移入できませんでした。
 あとは語りの視点が過去(作中の時間)や現代(読み手の時間)を行ったり来たりするので、どの視点で読めばいいのか悩みました。


こしょりんさん ★★★★

読み終えた今、涙がとまりません。
千代菊が和磨に心を寄せていくさまの表現かたまらなくせつなくあたたかい。
人は愛を知ると、こうも強くなれるのか!
美しい。
心が震えます。
鍬ヶ崎の人々の団結力と人情にも胸が熱くなる。
素晴らしい作品との出会いが嬉しい。
 


たんちゃんさん ★★★★★

初読みの作家さんでした。
宮古湾海戦の事は知らなかった。
明治になっても侍の心を持ち続ける和磨と
和磨に恋をした女郎だった菊千代。
2人の行末が気になり
ページを捲る手が止まらなかった。
侍としての和磨の気持ち
この時代では仕方がなかったのかな?
物語の最後、千代菊たちを守ろうとした
東雲楼の人々たちの気持ちに
ジンときてしまった。
和磨と千代菊の幸せを願わずにはいられなかった。
読めて良かったです。


haZさん ★★★★

自分の居場所、生き方、人生そのもの
いつの時代も誰だって悩み、考えて抜いているのだと思う。

その中でも、本書が描く大きな革命が起こっている時代に描かれた物語だからこそ、小さな村で、小さな存在たちが、自分を変革していく様に感動したのだと思う。

二人が逃げ果せて、新たな自分たちと向き合うことを願ってやまない。


ぶちくらわすぞさん ★★★★

これが明治初めの、平成、たった2つ前の時代(とき)なのか。
義と自分を信じ 時代に立ち向かう 変わらぬ二人の物語がここにある。


レビューのご投稿、ありがとうございました。

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◎編集者コラム◎『鉄道リドル』佐藤青南