みんなのレビュー >>>『骨を弔う』

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『骨を弔う』宇佐美まこと 


小野優さん ★★★★★

手に取った時は帯を見て流石に言い過ぎでは? と疑問でした。
正直ナメてました。すみません。
しかし実際は一回読んだ瞬間引き込まれる世界観。
舞台設定や織り込まれる現代の情景描写、社会問題にも触れつつリアルでありながら進んでいく非日常への道。
そして所々印象的に出てくる作者の名前や引用。
全てが伏線のリードであったと気づいた時には、すっかり二巡目に入って読み込んでいました。
一回目で世界観にはまり込みそれとなく自分と似ている境遇の人を探してしまう。
そして一緒に非日常をもとめはじめる。
二回目にはもう手が止まらない。
現代ミステリで久しぶりに名作に出会った。
帯の謳い文句に偽りなしと声高々に周りに吹聴したい一冊です。

この度はご縁を頂いた誠にありがとうございました。
大切にさせて頂きます。


パンダ大好きさん ★★★★

地元紙の小さな記事から数十年前仲間数人で山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。ある確かな手触りから「あれは本当に標本だったのか」? 骨格標本埋葬の発案者・真実子の消息は?

サスペンスドラマのようにオムニバス形式で繰り広げられる登場人物(哲平、京香、シカク(正一)、琴美、豊、そして真美子)それぞれの暗い過去と現在、宇佐美まことのホラー・幻想小説を思わせる「骨を弔う詩」が最終章で・・・

地方都市で主婦として生活する著者の経験からか、各章の日常描写が生き生きとしていて、テレビドラマのようにテンポ良く物語が進行していく。

暗い人生ばかりだが、琵琶の葉から滑り落ちる朝露に輝く虹色に、明日に向かって新たな一歩を踏み出す者へのエールをみた。


keisukeさん ★★★★

大きなドンデン返しがあるのかと思ってたらミステリーとしてはシンプルに進行。なんで6章があるのかと思ったらそこで1章の種明かし。気持ちよかったので星4つ。宇佐美まことは初めて読んだから分からんけど、この詩は本当に既出なのかな。他のも読んでみたい。


いつでも母さん ★★★★★

「確かめに行くか?」あの時埋めた骨が本物かどうか・・30年前の小5の子等が行った事。それぞれの記憶の欠片を繋げる時、ピースはきちっと収まるところへ収まる。あの頃の彼らに出来た事などいかほどか。子どもだったのだ。なのに真実子だけが全てを呑み込んで導いたのだ。30年は長い。血反吐を吐く思いの友や震災で家族を喪いただ生きてるだけの友。それぞれが今過去との決別・邂逅・そして前へ! 確かに彼らは骨を弔ったのだ。殺されていい人間などいないと言い切れるほど私は善人ではない。30年前に済んだことを今、確かめただけなのだ。いいんだ、それで。「真実が人を助けるとは限らない」のだから。救いのある結末にほっとした自分がいた。うさみまこと・・たいした奴だ。


WASHI@読書の時間!さん ★★★★

【骨を弔って・・うんうん、そうそう納得・・(最後)え! え〜〜〜(最後の最後)宇佐美爆弾炸裂!】・・・四国替出町の幼馴染みの真実子・哲平・京香・正一・豊の5人、そして、近隣のお姉さん琴美。子供の頃、幼馴染み5人で山に埋めた理科室から盗難した骨格標本の骨。現在の赤根川堤防から、山に埋めたはずの骨格標本が川増水の際に露出し見つかる事から、山に埋めた骨は本物の人骨だったのでは?・・・

①哲平の章 ②京香の章 ③正一の章 ④琴美の章 ⑤豊の章で、現在の豊が、哲平→京香→正一→琴美と尋問に訪れることで、山に埋めた骨の疑問を追求し、現在の彼らの状況を語るストーリー展開で、最後に驚愕の展開を見せ、最後の最後に、宇佐美爆弾がセットされている!(笑)


みゆさん ★★★★★

小さな新聞記事が思い起こさせた30年前の秘密の冒険。小学5年の時、幼馴染5人で埋めた「アレ」は何だったんだ… 悪夢に苦しむ豊は真実を知ろうとするが、首謀者の真実子はすでにこの世を去っていた。友を訪ね、記憶を辿るうちに明らかになる過去と、現在それぞれの境遇・苦悩。この2つがリンクして物語をグイグイ引っ張り、読む手が止まらない。そしてつなぎ合わせた記憶が指し示すのは、おぞましくも凄惨な出来事。真実子は知っていたのか、何を守ろうとし、何を行ったのか。全てが明らかになった時、4人は前を向いて進み始める。一条の光に温かな気持ちが広がるとき、それは不意にやってきた。とんでもないどんでん返し! えぇぇぇっ!! まさに衝撃の一冊、やられました!


てっすぃ〜さん ★★★★★

初読み作家さんだったのですが、激震でした。ただの人間ドラマではなくそれぞれの人物の深い闇や葛藤、過去のしがらみが鮮烈に描かれており30年前のあの出来事の本当の真実を知った時、胸の奥を抉られたような 衝撃に読み終わってからも暫し呆然としてしまいました。

心にドスンとのしかかる、けどそれが癖になる珠玉のミステリーでした。


こちおさん ★★★★★

小学生だった30年前のあの日、五人で埋めたものは本当に骨格標本の骨だったのかという疑念から物語は始まる。現在それぞれに悩みを抱える彼らが知ろうとする過去には、罪と呼ぶにはあまりにも痛ましい真相があり、そしてたとえどんな罪が横たわっていようとも、それを暴き断罪することが必ずしも正しいとは限らないのだと、関わった人々の思いに心動かされるドラマがあった。ミステリとしても骨の謎でグイグイ牽引しながら「豊の章」で語られる真実が圧巻で、同時に悲しい罪の上に人の情けが降り積もるような、優しさを感じる作品に仕上がっている。人は時に、思いもよらぬ誰かから自分の預かり知らぬところで、庇われ助けられ救われているのかもしれない。


だだださん ★★★★★

自然豊かな小さな集落の学校に通う男女5人の子供たちが、小学校から盗んだ骨格標本模型を山に埋めたはずだった。骨を弔う詩とともに。

30年後その中の1人は既に死に、残った子供だった大人たち4人は、本当は何を埋めたのか、今は市のスポーツ公園に変わってしまったあの場所に戻り確かめる事を決心した。かつて自由で幸せだった子供たちも今では日々の生活に苦悩し、その生活に疑問を抱きながらも、子供時代のあの疑念に終止符を打つ為に記憶を辿る。

当時の近隣住民夫妻の奇行、川で溺死したよそ者、職場のカネを着服し逃亡した男。その全ての謎、疑念・秘密が綻び、真実を知った時。

誰しもがその衝撃と感動に心を揺さぶられる!


MIUさん ★★★★★

一つの新聞記事から物語は始まる。

30年前、小学生の豊は幼馴染みの5人で訳があって確かに骨格標本を埋めに行った。だが、30年経った今、骨格標本が発見されたのは埋めた場所とは全く異なる場所だった。

骨格標本を埋めたのではなく、あれは人間の本物の骨だったのではないか…と疑念を抱いていた豊は、未だに時折その悪夢を見てうなされたいた。

新聞のニュースを読んだ豊は、真相を探るべく30年前の幼馴染み達に会いに行く…。

そこで新たな真相に少しづつたどり着く…。

冒頭から引っ張られ、とにかく読者の私も気になり次へ次へとページをめくる手が止まりませんでした。そしてそこには5人の幼馴染みの中で、いつも中心となって先頭を立っていた真実子にとてつもない魅力を感じられずにはいられなかったのです。

真実子に会えたら…と読みながらどんなにうずうずとしてしまった事か。

真相にたどり着く過程で、なるほど! そうだったのか! と、普通ならミステリーとして読者を納得させ楽しませ、ラストを迎える作品も多い中…この作品はとても良い意味で普通ではありません! 宇佐美まこと先生の名がこの作品に早くも出てくるのですが、ユーモアで終わるのではなく、重要なキーパーソンとなって再び現れる! これだけでも、この様な作品は他に読んだ事がありません。

過去を探っていく中で、真相が明らかになった時はあまりにも切なく、色々な場面で胸を抉られる思いでした。色々な感情が私の心を揺さぶるのです。

また、真実子が幼少期に言っていた『奇跡はね、それを見る力のある人のところにだけ来るんだよ』…という言葉。奇跡を信じて読み続けていた読者にも語りかけてくれている様な、宇佐美まこと先生の優しく温かな言葉が胸に刺さりました。

側から見ると幸せな夫婦、家族の問題、家族の絆、将来への不安等…誰もが悩みながら生きていく上で、この幼馴染み達もそれぞれに問題を抱えながら生きていた。それを最後には全て真実子が奇跡という魔法をかけた様な、皆がそれぞれ、また新たな希望とワクワクを胸に明日からを生きてゆくラストにはとても心を打たれ涙しました。

この世はまだまだ捨てたものじゃない…と。この物語を読んだ後には、その言葉がストンと不思議と胸に入ってくるのです。

この作品はミステリーの中に、過去の切なく苦しい事件と共に大きなどんでん返しで読者を良い意味で驚かせ、人生の希望と救いを描き、読み手の感情を様々な場面で揺さぶるとても秀逸な物語でした。

この作品は純粋無垢な青春時代を思い出させてくれ、そして強く前を向いて歩いて行こうと背を押してくれる読後感の素晴らしい作品ですので、たくさんの方に読んで欲しいと心から願います。

正義感溢れる親子そっくりな豊の父にはとても恐れ入りました!

個人的に真実子の『鶴がみんな恩返しをするとは限らない。コガネムシがみんな金持ちとは限らない。』と言う例え話が大好きです。

まだ読んでいない、宇佐美まこと先生の他の作品もすぐに読みたくなった次第です。

この様な素敵で貴重な作品を読ませて頂いた事にとても感謝しております。 


haZ3さん ★★★★

ミステリーとしての真相は、読者に分かりやすく提示されます。

しかし本作で大事なことは、真相に至るまでの人間の掘り下げにあると思います。

大人になった五人の子どもが、過去のターニングポイントに向けて自分を取り戻していく様は、じんと心を潤すこと間違いなしです。


こはるさん ★★★★

幼い頃に埋めた骨格標本をめぐって、同級生達が再び集まる。彼等が埋めたものは一体何だったのか。一人だけいなくなった少女の謎。

こんなに考えさせられ、惑わされたのは久しぶりだった。


たんちゃんさん ★★★★★

骨格標本が土中から見つかったと言う新聞記事を見つけた豊。
『30年前自分たちは何を埋めたのか?』
幼馴染を訪ねて真相を探る。
『豊の章』になるまで
私の中でどんよりと重苦しい時間が過ぎていたけれど
『豊の章』の真相から『真実子の章』で明らかになったラスト、驚きと感動で鳥肌がたってしまった!
『年を重ねることに意味があった』『この世界はまだまだ捨てたものじゃない』幼馴染たちが幸せでありますように!
豊のお父さん、朱里さん、最高でした。
宇佐美まこと先生の作品、
初読みでしたが素晴らしかったです!

本当に楽しい時間、過ごせました。
レビュアーに選んで頂け
嬉しく思います。
有難うございました。


泉水さん ★★★★★

久々に読み始めたら止まらない小説に出会いました。登場人物一人ひとりの深い闇にスポットが当てられこのまま暗く終わるのかと思いきや最後はとても爽快感のある終わり方でした。ミステリとしてももちろん楽しめました。これからのみんなの人生に幸あれ。


サクラさん ★★★★★

ハインリッヒの法則という理論がある。この法則によれば、ひとつの重大な事故の背景には、軽微な29件の事故があり、またその背景には300件のヒヤリとするような出来事が存在するという。
そのまま当てはまるというわけではないが、作品を読み進めていくうちにこの法則が頭から離れなくなった。普通なら、その出来事をすべて見ている人間などいないだろう。だがその昔、今はなくなってしまった田舎町で起こったある出来事を、たった一人だけすべて見ていた者がいた。

小学生のときちょっとした冒険のつもりで山中に埋めた骨格標本。あるニュースを機に、その冒険に参加した幼馴染たちはあの骨が本物だったのではないかと疑い、真相を探り始める。その過程がいろんな想像を誘いつつ、しかしいい意味で裏切られる心地よさにすっかりハマり、作品の世界に夢中になってしまった。あの骨が本物なら、それは誰のものなのか。冒険の主導者は、彼らを結んでいる子供時代の思い出を、その個性で彩った一人の女の子。彼女はなぜそんなものを冒険と称して山中深くに弔ったのか。そしてあのとき何を思い、何を考えていたのか。
少しずる明らかになる真相は、40代を迎え、それぞれ別の場所で人生を営んでいた幼馴染たちにも何かをもたらしていく。成功し現状に満足しているはずの者、自分を抑え続けている者、すべてを失いただ時間をやり過ごしている者、そして生きる目的が未だに見つからない者——。真相を知った彼らがそれぞれ出す答えは、容赦ないほど重苦しいストーリーの終わりに小さく花開き、暖かな気持ちにさせてくれる。

最後のオチは「えっ、そう来る?」と驚かされるものでしたが、そういう結び方をされた宇佐美先生の真意が気になるところです。


レビューのご投稿ありがとうございました。
 

 

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