◎編集者コラム◎ 『トヨトミの野望』梶山三郎

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『トヨトミの野望』梶山三郎


 本書は、2016年10月に講談社から刊行され、話題になった企業小説の文庫化です。当時、ビジネス街の書店では売り切れ店が続出。特に、名古屋の書店では同書が「蒸発した」と言われたほどの売れ行きでした。なぜか。それは小説に盛り込まれたエピソードや情報が、実在の自動車会社の、それもかなり内部の人物しか知らないファクトではないかと読めたからです。

 そのあたりの事情を、文庫に解説を寄せていただいた作家・夏野剛さんはこう書いています。少し長いですが、引用させてください。

「本書の内容のどこまでが事実でどこまでがフィクションなのか。

 これについて、巨大自動車企業に極めて近い経営者は99%が事実と私に言い切った。一方で良識ある自動車業界担当の官僚は、まあ、半分くらいじゃないですかね、と口を濁す。名古屋界隈の書店から本書はすべて消えた、とか(中略)さまざまな噂が駆け巡るが、真実を知るものは本書の登場人物のモデルとされる人物だけだろうし、彼らが本書の真偽を語ることは絶対にないだろう。

 本書は週刊誌ではないのだから、真偽のほどなどどうでもいい。フィクションと割り切って読むと、これほど面白い企業小説はない」

 さて、真実はどうなのか。担当編集者として言えるのは、この作品が周到な取材に基づいて得られた情報を複雑に組み合わせ、高度に練りこんで成立した大人のエンターテインメント小説だということです。

 あれこれ想像しながら読むと、面白さ倍増です。

 12月には、待望の続編『トヨトミの逆襲』も刊行されます。

──『トヨトミの野望』担当者より
トヨトミの野望

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