◎編集者コラム◎ 『トヨトミの逆襲』梶山三郎
◎編集者コラム◎
『トヨトミの逆襲』梶山三郎
本作品『トヨトミの逆襲』は、あまりに詳しすぎる内部情報、関係者しか知らないはずのエピソードが満載だったために、小説を偽装したノンフィクションではないかと噂され、発売と同時に書店から本が消えたという伝説の問題小説『トヨトミの野望』の第二弾です。
前作では、作品中の登場人物が現実の経営者、企業関係者、政治家、ジャーナリストの誰をモデルとしているか、熱狂的読者による人物相関図まで流布したようですが、これはあくまで「現実の自動車業界を取材し題材としたフィクション」です。作者である覆面作家の梶山三郎氏は、経済記者でもあり、現在も激動の自動車業界を取材し続けています。EV、自動運転、ライドシェア、さらにカーボンニュートラル、地球温暖化。激震する自動車業界の巨大企業に、さらに世界的IT企業が襲いかかる。持ち株比率わずか2%という創業家社長はこの危機を乗り切れるのか。現実世界と複雑にリンクし読者の想像力を掻き立てる、かつてなかったスーパーリアル経済小説、ふたたび「本が消える」かもしれません。
文庫の解説をお引き受けくださいました、銀行出身の作家・江上剛さんはこう書いています。
〈多くの人は、メガバンクは何か悪さを企んでいるに違いないと思っていた。しかしそれを知る手立てがない。それを元銀行員の私が、小説と言う形で伏魔殿の扉を開けたのである。このように経済小説は、伏魔殿である企業の中を覗きたい、知りたいという人々の興味や欲求を満たすことを求められている。
そのため優れた(ヒットした)経済小説には、必ずモデルがある。勿論、小説である以上、著者の想像力が横溢する架空の物語でなければ面白くない〉
この作品をどう読み解くかは、読者の想像力にかかっています。お楽しみいただければ幸いです。
──『トヨトミの逆襲』担当者より
『トヨトミの逆襲』
梶山三郎