なぜこの本が好きなのだろう? 好きな本について考える!
好きな本ってどこが好きで、〝好きな本〟となりますか? 自分の好きな本について考えると、より読書が楽しくなると思いませんか?
『麦の海に沈む果実』 恩田陸
中学生の時に出合い何度も何度も繰り返し読むため、今もずっと手元に置いている本です。
舞台は謎が漂う全寮制の学園、そこに異例の時期に転入してきた記憶喪失の少女。その少女が記憶を取り戻すまでの物語です。何かが起こっているのは確かなのに何が起こっているのかわからない不穏な空気の中、少しずつ明らかになっていく記憶と学園の謎! 怪しげな雰囲気が全寮制の学園をより孤高で魅力的にしており、その世界観にとても憧れました。今の私の好みの基盤になっている本です。
『陰陽師』 夢枕獏
鬼や死霊といった存在が身近にある平安時代、陰陽師安倍晴明が親友の源博雅を連れ、不思議な力を駆使して都で起こる奇妙な事件を解決していく物語です。
毎話、清明宅の庭を見ながら清明と博雅が酒を飲みかわしているところに奇々怪々な事件が舞い込み、では解決しにいこう、と話が展開していきます。この庭の描写が本当に素晴らしい。四季折々の草花や漂う香り、月や雲の情景、特に雨の表現の豊かさに驚きます。またこの毎度お馴染みなストーリー展開にも定型美を感じます。表現だけではなく話も読みやすく面白いので広い世代の方に読んでいただき、この日本語の美しさを感じてほしいです。
『かにみそ』 倉狩聡
こちらは分類としてはホラーにあたるのですが、読了後感動のあまりポロポロと泣いてしまいました。
あらすじは、何事にも意欲のない主人公が海辺で散歩中、一匹の蟹を拾い育てることから始まります。蟹はただの蟹ではなく、言葉を学び喋り知識をつけ、主人公の親友となります。蟹がとても可愛くて、人間×蟹の心温まる友情物語が続くかと思いきや……ホラー要素回収。
私のように感涙する人はあまりいないかもしれませんが、生きることに意欲のなかった主人公とただ生きることに必死だった蟹、友情と生きるという意味について考えさせられました。是非読んでほしい本です。