今日のメシ本 昼ごはん
女子力UPの必須成分
○月×日
本屋で働くことほど辛いことはないと、強く思うことがある。女性誌の大量発売日などはとくに辛い。お洒落をして銀座かどっかでデートをしたいと思う。あとはレシピ本。はらぺこグリズリー『世界一美味しい煮卵の作り方』も、読んでいると本当に辛くなってくる。怒りすら湧いてくる。どれも死ぬほどおいしそうなのだ。思わず唾を飲み込む。昼休み、即座に店を飛び出し「天下一品」へ。迷わず煮たまご入りラーメンを注文。無心でラーメンを食べ終えたところで、これだから永遠に銀座でデートなどできないのだと気がつく。
○月×日
今日こそは女子力を取り戻そうとおろしたての服で出勤。お店の入っている「WACCA池袋」には綺麗な女性が多い。そんな人たちの接客をするのに、お洒落をしないでどうすると活を入れ神崎恵『読むだけで思わず二度見される美人になれる』を読む。しかし今日は服選びに時間を取られすぎて朝ごはんを食ベ損ねた。今のうちにスタミナをつけてこようと「松屋」のネギ塩豚カルビ丼をかき込んだ。満たされて戻ると、キラキラ女子たちがタピオカミルクティーを飲んでいる姿が。焦って口紅を塗り直しながら思う。私の女子力、こんなんでいいのか。
○月×日
息つく間もないほど忙しい日である。ダッシュでコンビニへ。糖分を摂取しなければ、と目についたチョコクロワッサンを食べながら、ふと思う。こんな人生が、私が望んだものだったのだろうか、と。同世代の女子たちへの「羨ましい」という気持ちばかり募り、自身は一向にキラキラできそうにない。ふと、柚木麻子『本屋さんのダイアナ』が目に入る。本好き、本屋好きなら、誰もが楽しめるであろう小説だ。本によって女子二人の友情が結ばれていく、胸が熱くなるストーリー。そして思う。やっぱりこれでいいのかもしれない。これが私の人生なのだ。たとえキラキラしていなくても、それでもやっぱり私はこの場所にいるのが好きなのだ。忙しい毎日に追われながらも、この本屋という空間にいられることが、幸せなのだろう。きっと。