田島芽瑠の「読メル幸せ」第77回

田島芽瑠の読メル幸せ

第77回


9月になりました🌕
皆様いかがお過ごしですか?
この時期の洋服選びはとても迷いますよね?毎朝、天気予報をチェックして家を出ているものの天気が不安定な日が多く急に雨が降ってきたりと難しいなと思います。季節の変わり目なので皆様お気をつけください🥺

最近、私は海外旅行にとてもハマっていて、英会話を習い始めたり〝海外〟にとても魅力を感じているのですが、その私の気分にぴったりだった本をご紹介します。近藤史恵さんの『スーツケースの半分は』です。

「読メル幸せ」第77回

表紙の青いスーツケースの絵に惹き寄せられるようにして手に取った作品でしたが、まさに今の私が読むべき本で運命ってあるんだな〜と思いました。

「読メル幸せ」第77回

第一話の主人公真美がフリーマーケットで青いスーツケースに出合うところから物語は始まります。今までは勇気が持てずなかなか自分の意思を尊重して行動できなかった主人公が、「やりたいことをだれかの決断にゆだねたまま、ずっと宙ぶらりんのままにするのはいや」と青いスーツケースに背中を押され変わっていく。それから二話、三話と語り手は代わりスーツケースは真美から友人らに渡り旅をすることで〝幸運のスーツケース〟と呼ばれるようになる。誰かの背中をポンっと押してくれる。そんなスーツケースが人々に勇気をくれるお話です。

言葉選びが好きだな〜と思う作品でした。
「そう。花が欲しいときには花を買うし、コーヒーが飲みたいときにはコーヒーを飲むのよ。大きな望みは叶わないことが多いんだから、小さな望みを叶えてあげてもいいでしょう」と一つ自分の望みを叶えた主人公が語り、最後に「ひとりで、自分の行きたいところに行ける自分になる」と締めくくるところがとても好き。お話は第六話の母親の視点から第七話の娘の視点に変わるこの二話が特に好きだったな〜。母親の面影って娘の生活に沢山影響していて節々で〝母〟の存在を感じる。ご飯の味とか、仕草とか知識とか。久しぶりに先日、実家に帰省した時に「何か食べたいリクエストある?」と母に聞かれた際「オムライスとハンバーグ」と答えたのはどのお店で食べても少し違う気がしたからです。母の作るハンバーグの玉ねぎの食感と甘いけどさっぱりしてるケチャップソース、オムライスのふわふわの卵にしっかりトマトの味がするチキンライスが好きなんだ。「あーこれこれ」って思わずにやけてしまう。親に何か決断を伝える時の緊張感と、心配して色んなことを言ってくれるけど最後は必ず娘の気持ちに寄り添ってくれる感じが親子だなと読みながら思いました。七話の娘の視点で語る「遠い空がまぶしく見えて、どこまでも飛んでいきたくなった」という表現がとても好きで、私もこういう気持ちに共感しました。

改めて気付かされるきっかけをくれたり、励ましてくれたり、背中を押してくれたり、この作品は私達にとっての「幸運のスーツケース」だなと思います。旅好きはもちろん、旅に行きたいな〜と心に秘めてる方にもおすすめの一冊です。私も色んな所に旅に行けた気持ちになってとても楽しかったです。

良い本の旅を。田島芽瑠でした。

「読メル幸せ」第77回

(次回は2024年10月中旬に更新予定です)


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