◉話題作、読んで観る?◉ 第15回「美人が婚活してみたら」
©2018吉本興業
監督:大九明子/脚本:じろう(シソンヌ)/出演:黒川芽以 臼田あさ美 中村倫也 田中圭 村杉蝉之介 レイザーラモンRG 市川しんぺー 萩原利久 矢部太郎(カラテカ) 平田敦子 成河/配給:KATSU-do
3月23日(土)より全国公開
▼公式サイトはこちら
http://bijikon.official-movie.com/
美人は美人なりの悩みや闇を抱えているらしい。漫画アプリで連載され、累計1000万PVを突破しているエッセイコミック『美人が婚活してみたら』が映画化された。松岡茉優主演作『勝手にふるえてろ』のヒットが記憶に新しい大九明子監督が、結婚適齢期の女性の本音に迫ったブラックテイストのコメディに仕立てている。
30代の独身OL・タカコ(黒川芽以)は容姿端麗だが、男運がまるでない。これまで付き合ったのは既婚男性ばかり。将来性のない恋愛に疲れたタカコは、婚活に励むことを決意。親友のケイコ(臼田あさ美)と酒を呑んだ勢いで、婚活サイトに登録する。
「サクラだろ? あんたみたいな美人が結婚相手を探しているはずがない」と婚活サイトで出会った年上の男性から理不尽な罵声を浴びながらも、タカコは婚活を続行。オドオドしているが、性格のよいサラリーマンの園木(中村倫也)との初デートに好感触を得る。その直後には独身者限定のシングルズバーで、遊び慣れているイケメン歯科医の矢田部(田中圭)と連絡先を交換することに。異なるタイプの男性2人の間で、タカコの心は揺れ動く。
前作『勝手にふるえてろ』では、理想と現実の狭間で悩む20代のこじらせ女子の生態をユーモラスに描いた大九監督。本作ではよりリアルにアラサー女性の心理を掘り下げていく。結婚の決め手となるのは、安定感か、それとも心のときめきか? タカコの脳裏に過去の不倫体験のトラウマも蘇り、悩みに悩むことになる。
結婚すれば幸せが手に入るのかといえば、そうでもない。既婚者のケイコだが、食事をめぐって夫との口ゲンカが絶えず、実家の母親からの「早く孫の顔が見たい」というプレッシャーもキツい。独身者も既婚者もそれぞれの悩みに向き合いながら生きていることが分かる。
実話をベースにした原作コミックも読み応えあり。原作のタカコは病気を患ったことから、職場でブチ切れた末に退職。精神的にも経済的にも不安定に陥っていくなど、映画以上に30代女性のダークな世界が顔を覗かせている。理屈では割り切れない女性の心理を理解する上で、婚活男性にも一読することをおススメしたい。
(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2019年4月号掲載〉