◉話題作、読んで観る?◉ 第19回「アルキメデスの大戦」

◉話題作、読んで観る?◉ 第19回「アルキメデスの大戦」

監督・脚本・VFX:山崎貴/音楽:佐藤直紀/出演:菅田将暉 柄本佑 浜辺美波 笑福亭鶴瓶 小林克也 小日向文世 國村隼 橋爪功 田中泯 舘ひろし/配給:東宝
7月26日(金)より全国東宝系公開
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 東大受験漫画『ドラゴン桜』で知られる三田紀房が「ヤングマガジン」で連載中の歴史コミックを、『永遠の0』を大ヒットさせた山崎貴監督がVFXたっぷりに実写化した。数学で太平洋戦争の勃発を防ごうとする天才数学者の奮闘を描いた、新しいタイプの戦争映画となっている。

 戦艦「大和」が轟沈する衝撃的なオープニングに続き、物語は1933(昭和8)年に。海軍少将の山本五十六(舘ひろし)はこれからの戦争は航空機が中心になると予測していたが、頭の固い海軍の主流派は巨大戦艦の建造こそが国威発揚に繋がると自説を曲げようとしない。そこで山本は巨大戦艦建造案の予算見積りに誤りがあることを証明するため、帝大数学科きっての天才児・櫂直(菅田将暉)に協力を求める。

 海軍に加担することを最初は拒んでいた櫂だが、巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は、必ず戦争を始めるという山本の言葉に心が揺らぐ。勝算のない悲惨な戦争へと日本が傾いていくことを危惧した櫂は、得意の数学で海軍主流派と全面対決することを決意する。

 主人公の櫂は架空の人物だが、ワシントン海軍軍縮条約からの日本の脱退や日本海軍内での航空主兵主義と大艦巨砲主義との対立などの史実が巧みに盛り込まれており、退屈させないドラマ展開となっている。映画は原作の1〜3巻を中心に構成されているが、原作では4巻以降にゼロ戦開発者・堀越二郎からナチスドイツの総統ヒトラーまで、歴史上の著名人たちと櫂は次々と対峙することになるので、歴史の勉強にも役立ちそうだ。

 これまでの戦争映画の多くが、表向きは反戦を謳いながらも軍艦や戦闘機のかっこよさや軍人のヒロイックな活躍を見せ場にしていたのに対し、本作は戦争がもたらす高揚感や狂気に人間はどうしようもなく魅了されてしまうという心の闇について言及している。

 巨大戦艦建造派の計画を論理的に喝破してみせる櫂役を、若手人気俳優の菅田将暉がすっきりと好演。一方、国際的な舞踏家でもある田中泯は日本人の愛国心に訴え、巨大戦艦「大和」の建造に固執する平山中将を情念たっぷりに演じてみせる。論理 vs. 情念の戦いの結末に、誰もが驚くに違いない。

(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2019年8月号掲載〉

原作はコレ☟
『アルキメデスの大戦』
『アルキメデスの大戦』
三田紀房
(ヤングマガジンコミックス)