北上次郎

「推してけ! 推してけ!」第24回 ◆『やっかいな食卓』(御木本あかり・著)
評者=北上次郎(文芸評論家) 六十九歳で初めて書いた小説とは信じられないほど、うまい。まず、文章が滑らかなのだ。これだけで驚く。というのは、新人賞の下読みをやっている者の実感として言うと、素人の書いた文章は、どこかぎくしゃくしていることが多い。いま話しているのは誰なのか、それがわからないことすらある。かといって、それを
「推してけ! 推してけ!」第7回 ◆『緑陰深きところ』(遠田潤子・著)
評者・北上次郎(文芸評論家) 諦観と哀しみと力強い決意が心に残る 冒頭は一枚の絵葉書だ。雛人形の写真が印刷されている。正面から撮った男雛と女雛だ。通信欄には達者な筆でこう記されている。 花開萬人集 花盡一人無 但見雙黄鳥 緑陰深處呼 ──花開けば万人集まり 花尽くれば一人なし ただ見る双黄鳥 緑陰深き処に呼ぶを