里見蘭

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◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第123回
「③の目撃証言、これ、怪しいよなあ」都築が言った。「増山さんが逮捕されたあと、改めて現場付近で聞き込みをしたら、女子中学生をつけている増山さんを見た人物が現れたって──増山さんが逮捕されたの、最初の事
        1  コンビニのドアが開いて、一人の少女が店内に入ってくる。夏物のカジュアルを着た、中学生くらいに見える華奢(きゃしゃ)な少女だ。彼女は急ぐ様子もなく、店内を見渡して、右手に向かって歩
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第121回
   その試合から九日後、鴇田は星栄中ソフトボール部7番の彼女──死体発見後の報道で綿貫絵里香(わたぬきえりか)という名を知った──を犯した上で殺害した。  試合の翌日から、会員となったカーシェアリン
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第120回
 インスタブックの新しいアカウントで女たちとセックスしながらも、鴇田は浅見萌愛を忘れることができなかった。たんにセックスのみならず、殺人というそれまで知らなかった快感が加わったことにより、彼女は鴇田に
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第119回
   荒川河川敷を出ると、ふだんは聴かないAMラジオをつけ、一時停止や法定速度をきちんと守って車を走らせながら、②と③について思考を巡らせる。  ②。警察が優秀でやる気があれば、インスタブックを通じて
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第118回
 LINEのメッセージ。文頭がポップアップされる。  後藤(ごとう)みくる『トキオ、どうだった?』  みくるは「ズッ友」の一人。萌愛が相談した相手は彼女だったのだ。  メッセージを未読にしたまま考える
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第117回
 さて。  後始末をしなくては。  殺人となると淫行とはわけが違ってくる。捕まって有罪にでもなればだいぶ不自由になるだろう。だが大丈夫。暴行や傷害以外にも、たんにスリルを味わうため、窃盗や器物損壊を幼
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第116回
「大丈夫」 「え。だって……」 「妊娠したら産んでいい」 「──え」萌愛の顔が固まった。信じられないという目で鴇田を凝視した。 「マジで言ってる。お前と母親と生まれた子の生活の面倒をみてやる。萌愛が十
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第115回
      3  鴇田がLINEで会おうと連絡すると、既読がついてからいつもより長い時間が経(た)って萌愛から返答があった。 『いやです。お金くれないなら、もう会いません。友達にも相談しました。あんま
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第114回
「雇い主は俺だ。インスタブックだとセックスかサーフィンしかしてないみたいに見えるだろうが、俺はビジネスも持ってる」 「お母さんが、トキオさんの……?」うつむいて考える。強く首を振った。 「何でだ? お
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第113回
 鴇田は萌愛に、金を払うから会おうとメッセージを送った。彼女は応じた。同じ公園で待ち合わせ、荒川河川敷の同じ場所に車を停めた。萌愛はずっと固い表情で黙り込んでいたが、「先にお金ください」と言った。  
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第112回
「中でもイケたじゃん」顔を近づけて声をかけると、恥ずかしそうに真っ赤な顔を手で覆って何度もまばたきしながら「うん」と熱っぽい声で認めた。ペニスを挿入した。萌愛の反応を見、痛みがないか確認し、挿入角度を
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第111回
 鴇田は萌愛を仰向けにさせると、キスをした。さっきは感じなかった体温を感じた。萌愛の唇が柔らかくなっている。鴇田が唇に力を加えると自分から口を開いた。チャンネルが開いて精神と肉体がつながったのだ。  
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第110回
「萌愛ちゃんか。いい名前じゃん。トラウマを乗り越える方法、教えよっか?」 「……できるんですか?」 「できるよ」 「どうやって……?」食いついてきた。 「さっき言ったよな。嫌なこと思い出すと、その頃の
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第109回
「興味ある?」 「あ……駄目なら、いいけど」 「いいよ、教えてあげる。大した話じゃないし。俺さ、母親、画家なのね。で、俺もガキの頃、絵の練習とかさせられてさ、母親が自分でヌードモデルをやったわけ。見た
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第108回
 要領を得ない彼女の言葉をつなぎ合わせると、過去萌愛の身に起きたと思われる出来事が形をなしてきた。  小学四年生の頃、性被害に遭ったらしい。離婚したばかりだった萌愛の母親と萌愛は、困窮したシングルマザ
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第107回
 後部のベッドへ移ると、鴇田は、向き合って座る萌愛にそっと手を伸ばし、髪の毛に触れた。癖のない髪は細く柔らかく適度なボリュームがあり──貧困層には珍しいことに──上質のシルクのような滑らかさを持ってい
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第106回
 家の近くは避けたいという彼女が指定した待ち合わせ場所は、隣接した足立区綾瀬(あやせ)にある小さな公園だった。夕方六時。まだ完全には暗くなっていない。私服でベンチに座っていた萌愛に鴇田はすぐ気づいた。