BOOK LOVER

# BOOK LOVER*第13回* ふかわりょう
 40代に入ってからでしょうか。夏目漱石や川端康成、いわゆる文豪と呼ばれる人たちの小説を能動的に読んでみよう、と思うようになったのは。『こころ』をちゃんと読んでみて驚きました。主人公が慕う「先生」は一体どんな悩みを抱えているんだろうというひとつの大きなクエスチョンがあって、その謎で読み手を牽引していく。序盤からもう「何
# BOOK LOVER*第12回* 伊藤詩織
ことばって何だと思う? けっしてことばにできない思いが、ここにあると指さすのが、ことばだ。この数年、繰り返しページをめくった本がこの『詩ふたつ』だった。「花を持って、会いにゆく」「人生は森のなかの一日」という長田弘さんの詩2篇とグスタフ・クリムトの絵で構成された詩画集と出会ったのは、湯河原にあるブックカフェだった。雨の
# BOOK LOVER*第11回* 清志まれ
 先日、祖母が亡くなった。戦時中、女学生として動員され工場勤めをしていた彼女は寮暮らしだった。空襲があると防災頭巾を被り、寮を飛び出す。逃げ回る日々に嫌気がさしたのか、ある晩「もう死んでもいい、今晩ばかりは布団で朝まで寝る」と警報を無視して居座った。その夜、爆弾はいつもの避難壕に落ち、友らの命を奪った。寮にとどまった祖
# BOOK LOVER*第10回* 加藤シゲアキ
 高校一年生の冬、深夜バスでスノーボードに行く時に、眠れないからと買っていったのが金原ひとみさんの『蛇にピアス』。当時、綿矢りささんとの芥川賞ダブル受賞で話題になっていたので軽い気持ちで手に取ったが、今でも鮮明に内容を記憶しているほど、自分にとって重要な本となった。本には読んだその瞬間面白い、という本とずっと心に爪を立
# BOOK LOVER*第9回* 上田慎一郎
 二十歳の頃、この本に出会った。岡本太郎の名言をまとめた一冊である。「怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ」「ぼくは絶対に成功しないことを目的にしている」「人生は積みへらしだ」「ぼくは、しあわせ反対論者なんだ」常識外れの言葉たち。しかし、人生の本質を突きつけられた気がした。高校二年の夏、手作りイカダで琵琶湖の横断
# BOOK LOVER*第8回* モモコグミカンパニー(BiSH)
 学生時代、同じ大学生が主人公の長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を手に取ったのをきっかけに私は村上春樹の作品を愛読するようになった。それまでは、村上春樹=難しいというイメージを持っていて、なんとなく遠ざけていた。けれど、今では村上春樹作品なしの人生はどんなものか想像がつかないほどだ。彼の作品を読んで
# BOOK LOVER*第7回* 薄井シンシア
 フィリピンの華僑の家庭で育ち、日本の大学に進学。結婚後は、夫の仕事の都合でさまざまな国に移住してきた私は、どこへ行ってもずっとマイノリティでした。マイノリティってやっぱり生きづらいんです。それぞれの社会の主流派と常に異なるのですから、自分の中に信念がないとやっていけない。『アラバマ物語』はそんな私にとって人生の指針と
# BOOK LOVER*第6回* 広末涼子
 人生で悩んでいた時期は、いつも哲学の本を手に取っていた気がします。高校・大学時代は常にドラマや映画の台本を3、4冊持ち歩き、それぞれの物語に感情移入する日々でした。だからこそ、心をクールダウンさせてくれる何かを無意識に求めていたのかもしれません。人の心を揺さぶるストーリーの対極にあって、自分が言葉にできない感情に形を
# BOOK LOVER*第5回* けんご
 大学3年の夏。鬱陶しいほど暑い夏。身体も心も腐り切った夏だった。小学3年から野球を続けていた僕は、13年目にして努力を忘れていた。やる気は皆無だった。何かと理由を付けて練習をサボる毎日。それがどれだけ恥ずかしいことか、この文章を書きながら痛感している。当時から、小説を読むのは好きだった。暇があれば書店に足を運び、学生
# BOOK LOVER*第4回* 岸井ゆきの
 車で出かけるのが好きだ。助手席から見える風景の移ろい。向こうから来るかっこいいあの車はなんて車種? いつかは自分でも運転したい。幼い頃からそんなことをよく考えていた。ようやく運転免許を取るタイミングが摑めたのは2年前。教習所で読むのにぴったりな物語はないだろうかと探して見つけたのが『魂の駆動体』だった。SF好きな私に
# BOOK LOVER*第3回* 岸 善幸
 これまでずっと一緒に仕事をしてきた撮影の夏海光造さんが、海外からの帰り道、機内誌で紹介されていたこの本を知り、僕に教えてくれたのがきっかけです。2007年当時、NHK‒BS『わたしが子どもだったころ』というドキュメンタリードラマの題材を探していて、読んでみると、衝撃的に面白かった。池袋の今のメトロポリタンのあたりで、
# BOOK LOVER*第2回* 白石和彌
 高校時代、初めて手に取って以降、立花隆さんの本はよく読んでいました。大物代議士の金脈を研究したかと思えばサル学に関心を向ける。とにかく幅がある。興味を広げることで人間とは何か、その外郭を見つけたいとどこかで書かれていました。映画作りで自分が心掛けていることでもあります。『青春漂流』は、自分が何者でもなかった二十歳頃、
#BOOK LOVER*第1回*尾崎世界観
 一九九五年、小学五年生の秋に「未成年」というドラマを見た。年上の高校生がたくさん出てきて、ロックバンドのライブシーンが流れたり、女性の裸が映ったりした。普段は明るいイメージのテレビから、なんだか得体の知れない影のようなものを感じて、ちょっと不気味だった。それでもやっぱり気になって、毎週ドラマが始まる時間になると部屋で