◎編集者コラム◎『口中医桂助事件帖 毒花伝』 和田はつ子

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『口中医桂助事件帖 毒花伝』 和田はつ子


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 早いもので、もう14年目──。文庫書き下ろしとしてシリーズ第1作の『口中医桂助事件帖 南天うさぎ』を刊行したのが、2005年10月でした。今回の「毒花伝」は、シリーズ最終盤となる作品です。

 シリーズ開始時を思い出してみると、和田はつ子先生はそれまでミステリーやホラーを精力的に執筆されていましたが、この頃から時代小説に主力を注がれるようになりました。新作の打合せに伺うと、和田先生は現代の歯科医である口中医を主人公にした時代小説の構想をお持ちでした。その主人公にとても惹かれて、是非シリーズ物で書いて下さいとお願いした記憶があります。執筆に当たっては、神奈川県歯科医師会が運営する「歯の博物館」に和田先生と一緒に見学に行ったり、館長を務める大野粛英先生に和田先生が取材されたりしていました(大野先生には、その後「毒花伝」に至るまで歯学的な観点で原稿を見て下さっており、ご助言やアドバイスをいただいています)。

 今回の「毒花伝」は、前作の「恋文の樹」から2年ぶりとなります。ハルキ文庫の「料理人季蔵捕物控」シリーズがヒット作となり、和田先生は「料理人季蔵」シリーズを1年に3作から4作執筆しなくてはいけなくなりました。その間に他社でのご執筆もあり、なかなか私どもの続編に手が付けられませんでした。

 1作目の「南天うさぎ」から桂助と一緒に行動してきた鋼次と志保はおらず、治療所〈いしゃ・は・くち〉は、桂助がひとりでこなしていました。「かたみ薔薇」(11作目)で、志保は父親が殺害された後通ってこなくなり、行方不明に。鋼次は治療所に手伝いに通っていた美鈴と所帯を構え、店を開いています。

 本作は、桂助の元に骨董屋の隠居、上川屋啓右衛門と手伝いの真穂が訪れることから始まります。啓右衛門は、虫歯によって全ての歯を失っていました。桂助は、歯無しになった人々が食べたいものが食べられなくなり、外見も変わって希望を無くしていることに心を痛めていました。そこに、品川で見つかった骸が、桂助が手当てをして歯を全て抜いた男だったことが判明。そして、歯無しの遺体が次々と揚がります。一連の事件は、実は某藩の恐るべき計画だったのです──。さらに終盤、事件の渦中に記憶を失った志保が現れるのです! 志保を探そうと決心する桂助。そして次回が、いよいよシリーズ最終巻となります。

──『口中医桂助事件帖 毒花伝』担当者より

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『口中医桂助事件帖 毒花伝』
和田はつ子

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