◎編集者コラム◎ 『京都スタアホテル』柏井 壽
◎編集者コラム◎
『京都スタアホテル』柏井 壽
あっという間に1年が終わろうとしています。師走です。年末年始、例年ならばどこかに泊まりで出かけ、ゆっくり過ごすという方も多いことかと思います(残念ながら、このご時世では難しいのですが……)。
ホテルに泊まる方もいらっしゃるでしょう。プロポーズのため、誕生日を祝うため、気持ちを切り替えるため……。人それぞれシチュエーションは違えど、特別な日の宿選びは大切です。
12月に刊行した『京都スタアホテル』では、京都にある老舗ホテルが、さまざまな事情を抱えるお客様を迎え、もてなし、小さな奇蹟を起こします。
著者は、あの「鴨川食堂」シリーズの柏井壽さん! 今作は、単行本を文庫化した『海近旅館』に続き、宿にまつわる物語です。『海近旅館』は、宿再建というビジネスも関わる話でしたが、『京都スタアホテル』では宿泊客に焦点をあて、人の「心」をゆっくりと紐解いていきます。
柏井さんの作品は「食」の描写が秀逸ですが、今作も、料理が物語の重要なピースのひとつとなっています。誰と、どこで、いつ食べたか。味覚・視覚・嗅覚を使う料理は、思い出と直結することが多いと思います。その思い出を素敵なものにするために、どうもてなすか。ホテルを題材にするにあたり、料理は切っても切り離せないものですが、今回も「食」がうまく作用しております。
また、「鴨川食堂」シリーズの主要人物のひとり、鴨川こいしも、ゲストとして登場します。どうやら、父の流と何かあったようですが……。
表紙のイラストは、柏井さんたっての希望で、「鴨川食堂」のイラストも担当してくださった、坂本ヒメミさんにお願いさせていただきました。ゴシックながら、重厚感のある素敵なイラストをご執筆くださり、誠にありがとうございます!
ほんのり心が温まる「おもてなし」小説、ぜひご覧いただけますと幸いです。
旅行を気軽にできる日が、なるべく早く訪れることを祈ります。私なら、新幹線でいける範囲のところに、旅をしたいです。
──『京都スタアホテル』担当者より