HKT48田島芽瑠の「読メル幸せ」第34回

HKT48の田島芽瑠の読メル幸せ

第34回


2月になりました?

突然ですが、皆さんに〝推し〟はいらっしゃいますか?
こんな質問を私がするのも違和感がありますよね笑
(推しはめるちゃんだよ!ってみんなが言ってくれたと信じてお礼を言います。ありがとう? )

そう、私は有難い事に〝推していただく側〟に居ます。応援していただく中で「なんでこんなに好きになってくれてるんだろう」って思う事もあります。自分の利益ではなく推しの喜びの為に時間を使う事ができるのって、推しがいる人にしかわからない感情だと思うんです。

では〝推す〟とはどういう事なのか。今回は〝推す〟側の視点から描かれた、第164回芥川賞受賞作『推し、燃ゆ』(作者: 宇佐見りんさん)を紹介したいと思います。

男性アイドルを推す主人公女子高生〝あかり〟は推しの存在だけが生き甲斐だった。そんなあかりが全てを捧げてきた推しが炎上してしまう。推しの炎上をきっかけに変わっていく主人公の姿を見て、私は胸が苦しくなりました。オンライン握手会の休憩時間に読んでいたので、尚更凄く重みを感じました。決して愛が重いと感じたわけではなく、今目の前の画面に映ってるファンの方、いつもリプライくれる人、そばに居て応援してくれるファンの方々を背負うような気持ちになったんです。

ふと、朝井リョウさん作の『武道館』を思い出しました。表の煌びやかさとは違い、輝く為に葛藤する泥臭い裏側の部分をリアルに描いていて、アイドルをしている身から読んでも共感できた作品でした。

今回は、その逆側の視点で描かれている作品ですが、根本的なものは変わらないのだと感じたんです。だってファンは推しの裏側は知らないし、推しもファンの裏側は知らない。応援する側にも向き合う現実があって、応援される側にも向き合う現実がある。お互いが人間同士なんだという事を、痛感しました。当たり前のことなのに、この作品を通して教えてもらい、読了後の今、なんだか不思議な気持ちです。

炎上をきっかけに変わっていく推しの環境に追いつかない主人公の気持ち。なのに突きつけられる現実の厳しさ。向き合わなきゃいけないのに……。主人公のもどかしさや苦しさ、心の叫びが紙面から溢れ出て読者の心に流れ込んでくる。SNSに大きく左右される、今の世の中が滲み出ている作品だからこそ生々しさを感じる。この時代だからこそ生まれた、叩きつけるような小説。

令和を生き抜く全ての人に読んで欲しい作品。

作者の宇佐見りんさんが私と同い年な事を知り驚愕しました。同じ年月を共に生き抜いてきた同世代から生まれた作品。感慨深いですね。言葉選びにセンスを感じて、とても好きになりました。私も頑張ろう。

思春期特有の葛藤は勿論ですが、この作品は凄く生臭さを感じて10代の女の子が今を生きてるんだという事を見せつけられました。
一度この感覚を体験して欲しいです。

良い本の旅を、田島芽瑠でした。

(次回は来年3月中旬に更新予定です)

 
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