夏こそ本の世界へトリップしよう
夏、日差しが和らぐ夕方からのチルタイム。
敢えてテレビを消して、流す音楽は穏やかに、扇風機のそよ風を感じながら、キリリと冷やしたビールを片手に読書するのが私のオススメ。読後の爽快感が心地よい3冊を選んでみました。
『ダンデライオン』(中田永一)
人気のタイムリープのエンタメミステリー。
2019年31歳の僕は、1999年11歳の僕と入れ替わる。たった1日。彼女を救うために。 全ては観測された出来事なのか。決められた運命からは逃れられるのか? タイムリープで直面する人生のそれぞれの瞬間、その記憶への疑問。でもどの瞬間も、選択し決断しているのは自分。だからこそ、最後の事件の真相とその後の物語が心地よく胸に響きます。
『シーソーモンスター』(伊坂幸太郎)
8人の作家による競作企画。「螺旋」プロジェクトの一作。
この作品は昭和初期と近未来が舞台になっていて、それぞれの話がリンクする展開も面白い。
嫁 VS 姑。交通事故で生き残った子供同士。身近で、なんとなくソリが合わないと思っていた相手が、実は「海族」と「山族」の違いで、その戦いだという壮大な背景を背負っているとか、荒唐無稽のようでいて、意外に自分の周りの対決もそんな関係性だったらと夢想するのも楽しい。
嫁が実は凄腕のスパイだったり、交通事故の背景にAIや情報社会への警鐘が潜んでいたり。時事問題も盛り込み、壮大に展開するストーリーに翻弄されつつ、一気に読める二篇の冒険譚。プロジェクトの他作品も併せて読みたくなります。
『夏物語』(川上未映子)
最後は少し骨太の本格小説。大阪の貧しい下町で育ち、小説家を目指し上京した夏子。38歳未婚。パートナーなし。子どもが欲しいと思ったとき、AID(非配偶者間の精子提供)の出産を考える。
子どもを産む・産めない・産まない、それぞれの立場で語られる様々な迷いと決断。性の役割に対する漠然とした違和感。AIDで生まれた子の立場からも語られる苦悩や葛藤。
技術も価値観も多様性溢れる今だからこそ考えるべきかもしれない、この世に生を生むこと、生まれることの意味。いっぱいの泣き笑いは、やっぱり愛に溢れていて元気になれます。