◎編集者コラム◎ 『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井点線
◎編集者コラム◎
『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井点線
香取慎吾さん主演で9月23日から公開される映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』を小説化したのがこの作品です。
「夫婦って何だろう?」とさまざまな夫婦のカタチを映画のテーマに考えた市井昌秀監督が、約2年の歳月をかけて、脚本を完成させました。
脚本を書き始める段階で香取さんの主演が決まり、市井監督は、「平凡な日常を生きる香取さんが見たくて書き進めていきました」と明かしています。
編集担当の私は、脚本を読んだ後に、映画の初号試写を観せていただく機会があったのですが、香取さん、妻役の岸井ゆきのさんを始め、出演者の方々の演技がまさに、脚本の中の人物像とぴたりと一致し、驚嘆しました。
小説版の原稿執筆が始まったのは、映画が完成した後でした。著者の「市井点線」さんとは、実は市井昌秀監督と妻の市井早苗さんとの夫婦ユニット名なのです。これまでも市井昌秀監督の映画『箱入り息子の恋』、『台風家族』では、市井点線の名義で小説版を出版しています。
今回の小説は、市井点線さんとしては、初めて〝三人称〟の文体だったこともあり、当初読ませていただいた脚本とはまた違った味わいがありました。読んでいて脳内に再現されるのは、映画で観たあのシーンそのもの。
小説には、映画には出てこないエピソードや後日談も加えられているので、映画を観た方にはぜひ、小説まで読んで最後のピースも合わせていただきたいです。
逆に、小説を読んでから映画を観たら、答え合わせをしていくような気持ちよさがあると思います。
映画では「ものすごいアクションとか爆破シーンがなくても日常の機敏だけで引き込まれる、そういう面白さに挑戦できたと思います」と市井監督。
まさに、描かれているのは〝日常の機敏〟なのです。
ホームセンターの副店長として働く、香取演じる裕次郎。そこへ買い物にやって来た日和(岸井ゆきの)、何気ない日常の中で出会って、恋をして、結婚したふたり。しかし数年後には心のすれ違いが生まれていた――という、どこにでも誰にでも起こりそうな展開ではあるけれど、そこで強烈なスパイスとなっているのが、投稿サイト<旦那デスノート>です。
表向きは仲良し夫婦に見えるけれど、妻は夫への不満を〈旦那デスノート〉に投稿し、鬱憤を晴らしています。妻達の叫びを字面でつきつけられることで、小説はまたインパクトが大きいはず。
「夫婦げんかは犬も食わない」けれど、笑っているチャーリーとは、ふたりが飼っているペットのふくろうのことです。ちなみに。
コメディなのに、ホラーなんじゃないかと冷やっとする場面もあり……。ぜひ映画と併せてお読みください。
──『犬も食わねどチャーリーは笑う』担当者より
『犬も食わねどチャーリーは笑う』
市井点線