◎編集者コラム◎ 『警視庁特殊潜工班 ファントム』天見宏生
◎編集者コラム◎
『警視庁特殊潜工班 ファントム』天見宏生
現在、文庫書き下ろし警察小説は、文庫市場を支えている最重要ジャンルと言っても、過言ではありません。
出版市場における文庫市場の占有率を見れば、間違いなく、出版界の大黒柱のジャンルとなっていて、今や、文庫書き下ろし時代小説と肩を並べる、一大ジャンルにまで成長しています。
となれば当然、作家さんにとっても、最前線の最激戦区となるわけですが、その戦いに果敢にチャレンジしたのが、本書でデビューした、天見宏生先生です。
一口に警察小説とは言うものの、組織軋轢物、アクションバトル物、本格捜査物、ピカレスクロマン物など、さまざまありますが、本書『警視庁特殊潜工班 ファントム』は、公安防諜物にあたるでしょう。
「警察官として未登録どころか、戸籍上、すでに死んだ者たちが、人知れずに人を守る」という設定の物語です。
「すでに死せる者たち」は、どんなに活躍しても、日常生活からすれば水面下での活動ですから、人から一切感謝をされませんし、評価すらされません。他者の目に入らないのだから、仕方がないと言えば、仕方がないのですが。
SNSや配信サイトが世界中に普及したことで、人々の承認欲求が人類史上最も高まっている中、他者から目を向けられなくても、「すでに死せる者たち」が孤独な戦いを続けるのは、一体なぜなのか? 愛する人と会えなくなってまで、人を守るのは、どうしてなのか?
時代の風潮に流されない人々、他者の評価軸で動かない人々は、いつの時代にも存在します。
彼らが、一体どんな人生観、価値観で生きて、働いているのか?
ひょっとしたら、その答えがこの作品にあるのかもしれません。
──『警視庁特殊潜工班 ファントム』担当者より
『警視庁特殊潜工班 ファントム』
天見宏生