◎編集者コラム◎ 『私の夫は冷凍庫に眠っている』八月美咲

◎編集者コラム◎

『私の夫は冷凍庫に眠っている』八月美咲


カバーイラストを担当してくださったのは、コミック版の作画も担当された高良 百先生です。

 小学館文庫「私の夫は冷凍庫に眠っている」の編集者コラムをお読みいただき、ありがとうございます! 本作の編集を担当させていただきました、A田と申します。

 先日放送が開始された本仮屋ユイカさん主演の実写ドラマ版も大好評の本作。原作小説の担当者として、この小説の1番すごいと感じているところは「たった1行でこんなにも心をゾクゾクさせるのか!」という、「1行の秀逸さ」にあると思っています。

 そこで、この編集者コラムでは、絶対に読み飛ばしてほしくない、細かすぎても伝えたい本作の秀逸すぎる1行ベスト3を紹介したいと思います!

 ということで、まず第3位!

 結婚以来、夫である亮からの暴力に悩み続ける主人公の夏奈。徐々に亮への殺意が膨らんでいき、ある夏の日、夏奈はついに亮を殺害してしまいます。そして隠蔽のため亮の死体を冷凍庫に入れたあと、夏奈は「ついに自由を手にいれた」と、炭坑節の音に誘われ、盆踊り大会で一心不乱に踊り続けるのですが……

 そんな彼女を見ていた、見知らぬ主婦が娘にふと漏らした一言がコチラ、

 12ページ1行目「あんな風になれたら、お母さんももっと幸せになれたかも」

 本作が持つ恐ろしさ、それは決して他人事ではないと読み手にしらしめる、冒頭から最高にゾクゾクさせてくれる1行でした!!

 続いて、第2位!

 夏奈が夫の亮を殺した翌朝。何事もなかったように帰宅したのは――殺したはずの亮でした。亮の帰宅に、夏奈は戸惑いを隠せず……。こうして、殺したはずの夫との奇妙な生活が描かれていく本作。やがて夏奈は、亮の正体を疑問に思いながら、彼への憎しみから亮が食べるものに「ある物」を忍ばせます。しかしその行動が、思わぬ事態を招いてしまい……そのまさかの真実が発覚したシーンでの1行がコチラ!

 123ページ14行目の、どーーーーんっ

 読者の予想を大きく裏切る衝撃を、160キロの直球ストレートで描いた1行! 「ま、まじかーーーー!!」と、表現そのまま「どーーーーんっ」と椅子からころげんばかりにのけ反りました!!

 そしてそして、第1位はコチラ!

 最終ページ、最後の1行!!

 はい、すみません! ネタバレになってしまうので詳細に書けないのが惜しいのですが、そうなんです、本作はラスト1行まで、いや、このラスト1行こそが1番怖いです!! この1行のために、これまでの物語があったのかと思わせる作品でした。

 冷凍庫に入れたはずの、殺した夫とのスリリングな生活がどういう結末を迎えるのか、気になったかたはぜひ、本書をお手にとっていただければ幸いです。

 以上、細かすぎても伝えたい「私の夫は冷凍庫に眠っている」の秀逸すぎる1行ベスト3、でした!

──『私の夫は冷凍庫に眠っている』担当者より

私の夫は冷凍庫に眠っている

『私の夫は冷凍庫に眠っている』
八月美咲

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