◎編集者コラム◎ 『ホープ・ネバー・ダイ』アンドリュー・シェーファー 訳/加藤輝美

◎編集者コラム◎

『ホープ・ネバー・ダイ』アンドリュー・シェーファー 訳/加藤輝美


「な、何これ笑えるんですけど…」

 アメリカの小説『ホープ・ネバー・ダイ(原題「HOPE NEVER DIES」)』をエージェントから紹介されたのは、去年の11月、アメリカ大統領選でジョー・バイデンが当選した直後。紹介文にはこう書かれていました。

「なんと、政治の舞台から退いたオバマと、オバマ政権時代の副大統領だったジョーが、独自に正義を追求すべく、コンビでにわか探偵に!?」

 そして添付された原書の画像ファイルを開いた途端、思わず噴き出してしまったのです。

 大真面目な顔でオープンカーの助手席に立つ「イケメン」オバマ元大統領。隣の運転席には、真剣ながら必死感の否めないバイデン現大統領。さらにその下には、シリーズ続編『HOPE RISE AGAIN』の書影も。こちらはなんと、ヘリコプターの梯子に乗ったオバマが地上のバイデンに手を伸ばすという、某ビール「S・D」だとか「ファイト一発!」某栄養ドリンクの、バブル期の TVCM を彷彿させるビジュアルで(古くてスミマセン)、とにかく無性におかしくてPCを前に一人でププププ…と笑ってしまったのです。

 早速上司に書影を見せて「この本やりたいんですけど!」と持ちかけると、「この絵、使っちゃって大丈夫…?」と心配される始末。確かにこのおふざけ感、不安になるのもわからないではない。が、「いやいやアメリカではNYタイムズ紙やUSAトゥデイ紙のベストセラーリストに入ったし、Amazonの月間1位にもなっているちゃんとした本なんですよう」と押し切り、こうして日本の皆さまにもご紹介出来ることになりました!

 ちなみにこの本、立派な小説です。トランプ政権下、ホワイトハウスを離れたバイデン&オバマが馴染みの列車車掌の不審死に疑問を抱き、独自に調査をはじめる…というお話で、実在の新旧大統領二人がコンビを組んで事件の真相を追うというぶっとんだ設定もさることながら、ギャグやジョークとしてちょいちょいはさまれるアメリカ時事ネタの可笑しさや、主役二人の「ブロマンス(〝ブラザー〟と〝ロマンス〟をかけ合わせた造語。親密な男同士の友情の意)」ぶりが多くの読者を惹きつけたようです。

 何より惹き込まれるのは、やはり主役二人のキャラクターとその夫婦漫才のような掛け合いです。「クールで隙が無くて何をやっても格好いいスターなオバマ」と「人はいいけれど地味で要領が悪くてイケてないバイデン」という、おそらく世界中の誰もが抱いているイメージのキャラのままで暴れ回る姿が、可笑しくて可笑しくて。

 今回解説をお願いしたのは、あの池上彰さん。わかりやすくて、さらに作品が面白くなる解説もぜひ!お読み頂きたいのですが、その解説のなかで「日本で元総理大臣と元官房長官が力を合わせて事件を捜査するという設定の小説が成立するかと考えると、ここはアメリカならではなのでしょう」と言及しています。確かに、日本ではちょっとあり得ない。

 そんなアメリカの懐の深さを実感させてくれる…というより何より、ただただ面白くて笑いながらアメリカ事情も学べて、しかも実はちゃんとミステリしているこの小説、まずは読んで見てください!そしてもし続編も読んでみたいかも…と思ったら、周りの人にもこの面白さを拡散して頂けると嬉しいです!

──『ホープ・ネバー・ダイ』担当者より

ホープ・ネバー・ダイ

『ホープ・ネバー・ダイ』
アンドリュー・シェーファー 訳/加藤輝美

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