◎編集者コラム◎ 『鬼嵐』仙川 環
◎編集者コラム◎
『鬼嵐 』仙川 環
この原稿を書いている11月29日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染が広がっていることを受け、外国人の入国禁止を全世界に拡大すると政府が発表しました。新型コロナウイルスが中国・武漢で検出された当時、不気味さを感じつつもどこか遠くの出来事のように考えていたのを思い出します。その後のことは、ここで述べるまでもありませんね。
これと似たような感覚をどこかで味わったことがあったな、と思い返せば……そうでした! 今からご紹介する文庫『鬼嵐』の単行本を読んだ時の、あの感覚なのでした。
単行本が刊行されたのは2018年5月。当然、新型コロナの片鱗も感じることのない日常で、パンデミックといえば、海外では近年の SARS や MARS 、日本では天然痘やコレラなど、今を生きる私にとってはどこか遠い時代、地域のものというイメージが強かったのも事実です。医療ミステリーの第一人者として数々の話題作を生み出してこられた仙川環さんの描く展開を、縁遠い世界だからこそ興味深く、息を呑みながら読んだものでした。これがのちにリアルに感じられるような状況になるとは思いもせず……。
タイトルとなった「鬼嵐」は「突然、発症して、身体の中を嵐のように暴れ回る」ことから、名付けられた謎の殺人ウイルスのこと。ひとたび感染すれば、致死率100パーセントという恐ろしすぎるウイルスです。舞台は過疎化が進む日本の地方都市。そこで連続して発生した謎の感染死の実態を主人公の女性医師が追うのですが、真相にたどり着くのは困難を極めます。果たして感染源は何なのか、そしてその裏側にあった驚愕の真相とは??
まさに今の時代を予見したと思われる衝撃作。ぜひお読みいただければ幸いです。そして、なによりもコロナ禍が一日も早く落ち着くことを願って止みません。
──『鬼嵐』担当者より
『鬼嵐』
仙川 環