◎編集者コラム◎ 『人面瘡探偵』中山七里
◎編集者コラム◎
『人面瘡探偵』中山七里
『犬神家の一族』『八つ墓村』……巨匠・横溝正史が残した数々の名作は今もファンを魅了し続けています。近年では池松壮亮さんや加藤シゲアキさんが金田一耕助を演じていたのが記憶に新しいですね。
金田一シリーズといえば、閉鎖的な土地で殺人が起き、家族の因縁やその地にまつわる怪奇めいた現象が絡み合って……という、いかにも不穏! なイメージがあるのではないでしょうか。
その世界を「どんでん返しの帝王」中山七里が現代に甦らせた! それが本作『人面瘡探偵』です。単行本刊行時、中山さんは「タイトルだけで物語すべてが伝わると理想的。例えば『ルパン三世』のように。そこで思いついたのが『人面瘡探偵』でした」と語りました。その通り、本作は主人公に宿る人面瘡が探偵となり謎に挑むという、前代未聞のミステリーなのです!
主人公の三津木六兵は相続鑑定士。子供のころ負った怪我が人間の顔のような傷跡になり、ある日突然しゃべり始めたのです。それは人面瘡という怪異なのでした。そして今、六兵はある山林王の分割協議に立ち会うことに。ご多分に洩れず、相続人は皆いわくありげ。ある晩、蔵で長男夫婦が焼死、続けて次男が水車小屋で縊死しているのが発見され……。そんな状況でジンさんは言うのです。「俺の趣味にぴったりだ。好きなんだよ、こういう横溝的展開」。
スピード感あふれる展開、予想の斜め上をいく殺人現場。ミステリとしての面白さはもちろん、ジンさんの舌鋒に振り回される六兵が可笑しくも愛らしく、まるで漫才のよう。まさに全部盛り! な要素満載。
こんなにも中山七里エッセンス特濃の作品、どんな装丁に……悩んでいた担当ですが、デザイナーさんから会心のご提案が。それが今回使用させていただいた伊藤博敏さんの造形作品「なめた奴等」でした。
少し前に「脳がバグる」とSNSで話題になった伊藤さんの作品ですが、他にも驚かされるものがたくさん。特に「なめた奴等」は、無生物に命が宿ったような違和感や、唇の端を歪めた表情が皮肉を飛ばすジンさんのイメージにぴったり! たいへんインパクトのある装丁に仕上がりました。
3月にはシリーズ第2弾『人面島』も発売。隠れキリシタンの島で起きた密室殺人事件をジンさん&ヒョーロクが追ううち、台風で周囲との伝達手段が立たれてしまい……というクローズドサークル好きには垂涎の設定です。本作と合わせて、ぜひ手にとってみてください。
──『人面瘡探偵』担当者より
『人面瘡探偵』
中山七里