◎編集者コラム◎ 『警部ヴィスティング 悪意』ヨルン・リーエル・ホルスト 訳/吉田 薫

◎編集者コラム◎

『警部ヴィスティング 悪意』ヨルン・リーエル・ホルスト 訳/吉田 薫


警部ヴィスティング映像化

 2022年(つまり今年)3月、ヴィスティングのドラマが遂に日本で放送される。
 スウェーデンに拠点を置く北欧No.1のローカル配信サービス Viaplay (ヴァイアプレイ)が制作したドラマを WOWOW が放送・配信する。
  WOWOW と言えば、ヘニング・マンケル原作の「刑事ヴァランダー」シリーズ、ユッシ・エーズラ・オールスン原作の「特捜部Q」シリーズの放映も WOWOW だ。これでわが「ヴィスティング」も、北欧物オールスターの一員に認められたようでうれしい。

 本シリーズの第1作『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』刊行の際、このコラムでこんなことを書いた。

「ノルウェー警察の「ヴィスティング警部」が日本に初めて登場したのは2015年のことだった。書店で見たハヤカワ・ミステリの一冊、グレーの表紙に巻かれた真紅の帯に、〈「ガラスの鍵」賞 マルティン・ベック賞 ゴールデン・リボルバー賞 三冠受賞!〉の文字が燦然と輝いていた。――ところがその『猟犬』以降、著者ヨルン・リーエル・ホルストの名も、ヴィスティングの名前も、絶えて見ることがなくなっていた。」

 ヴィスティングに再会したのは3年後の2018年、毎年10月に開催されていたフランクフルト・ブックフェアでのことだった。恒例になっていたスウェーデンのエージェント(版権代理人)サロモンソン・エージェンシーとのミーティングで、手渡されたライツカタログをめくっていると、雪原の上に十字架の形で男が横たわる絵に載せられた〝WISTING〟の7文字が目に飛び込んできた。やった、見つけた! と思ったものである。

 あれからさらに3年以上も経ち、ヴィスティングの「コールドケース・シリーズ」も3作目を刊行する運びとなった。折しも飛び込んできたニュースが、冒頭の WOWOW によるドラマ放送だった。そしてここからは非公式だが、ドラマの第2弾は本作が原作になっているという。最近、そんな噂が流れてきた。また新たな楽しみができたところである。

【あらすじ】
 二人の女性に対する暴行・殺人・死体遺棄の罪で服役中の男が、第三の殺人を告白した。
 男は、死体を遺棄した場所を供述する見返りに、世界一人道的とされる刑務所へ身柄を移送しろという。
 ラルヴィク警察の主任警部ヴィスティングらが警備態勢を敷く中、手足を拘束された男が現場に到着した。転倒を繰り返したため足枷が外されると、一瞬の隙をついて男が走り出す。直後爆発が起こり、男の姿は忽然と消えた。
 残虐な犯罪を繰り返してきた男には、共犯者がいるとされていた。今回の逃亡にもその人物が関与したのか。目の前で逃亡を許したヴィスティングの追跡が始まる。

    
──『警部ヴィスティング 悪意』担当者より

警部ヴィスティング 悪意

『警部ヴィスティング 悪意』
ヨルン・リーエル・ホルスト 訳/吉田 薫

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