◎編集者コラム◎ 『十津川警部 仙山線〈秘境駅〉の少女』西村京太郎
◎編集者コラム◎
『十津川警部 仙山線〈秘境駅〉の少女』西村京太郎
2022年3月6日。突然のニュースに言葉を失いました。西村京太郎先生ご逝去の報。
小学館の文芸PR誌として1974年から現在まで続く「本の窓」(20220年12月よりWEBマガジン)でも、西村先生には幾度も連載をしていただきました。同誌での最後の作品となった「十津川警部 四国まんなか千年ものがたり 四国 土讃線を旅する女と男」の最終回は2020年12月号。その後コロナ禍で先生にお会いするのもなかなか叶わず……。先生のお元気そうなご様子に、状況も落ち着いたところで、今後のことについてお話を進めていた矢先でした。
今回の文庫新刊『十津川警部 仙山線〈秘境駅〉の少女』も「本の窓」での連載を経たものです。死期が迫った無期懲役囚の男から突然の依頼を受けた十津川警部。それは、自分の写真をある女性に渡してほしいというもの。当時15歳だった女性とその男が15年前に出会ったという仙山線の三ツ森駅に十津川は向かいますが、無人駅で廃止が決まった駅に、女性の消息のヒントとなるようなものは見出せません。その後、十津川がある情報を得たことで、宮城から京都へと舞台は一転します。そこから先は思いもよらぬ歴史の闇がかかわってくるのですが……。京都をよく知る西村先生だからこその深い内容に息を呑みます。物語はぜひ文庫でお楽しみください。
ところで、山前譲さんが解説にも書かれていますが、三ツ森駅のひとつ隣、作並駅付近には「美女づくりの湯」といわれる作並温泉があるそうです。これはぜひ足を運ばねば……。宮城、山形のグルメも堪能して、と想像は膨らみます。
トラベルミステリーというジャンルを世に広め、読む者、観る者を魅了する作品を生み出し続けてこられた西村京太郎先生。640冊を超えるオリジナル著作は、これからも多くのファンを楽しませてくれることでしょう。
最後に、長年の担当編集者による寄稿文(「本の窓」2020年5月号掲載)をご紹介したいと思います。西村先生の静かな佇まいを想像して、しみじみしてしまいます。
──『十津川警部 仙山線〈秘境駅〉の少女』担当者より
『十津川警部 仙山線〈秘境駅〉の少女』
西村京太郎