◎編集者コラム◎ 『予備校のいちばん長い日』向井湘吾 企画・監修/西澤あおい
◎編集者コラム◎
『予備校のいちばん長い日』向井湘吾 企画・監修/西澤あおい
『予備校のいちばん長い日』の編集者コラムをご覧いただき、ありがとうございます。本作の編集を担当しました、A田と申します。
突然ですが、皆さんは「受験」というものにどのような思い出がありますか? 人生が変わった、もう二度としたくない、糧になった、泣いた、笑った、などなど。様々な思い出がある中、やはり受験というと「難しい」「解けない」「分からない」といった思い出が頭に浮かぶかたが多いのではないでしょうか。
余談ですが、どうやら私が生まれてはじめて味わった「解けない」は幼稚園時代にさかのぼるらしく、当時、お受験用の塾で出された「ハサミで紙を三等分に切ってください」という課題に対し、笑顔で紙吹雪を作り、その場で「えいや」とばらまいたそうです。やんちゃです、はい。
かくして塾の先生に「お宅の息子は天地がひっくりかえっても受からない」と断言された母はお受験を諦めたそうです。賢明ですね、はい。
と、余談はここまでにするとして――、とにかく世の受験問題には常に「難しい」「解けない」「分からない」がつきまとうものですが……それは受験する生徒側のお話。
当然、塾や予備校の先生は解けない問題などあってはならない――はずなのですが……。
かつて、そんな予備校の先生たちでも解くことができなかった「伝説の入試問題」があったことを、皆さんはご存知でしょうか。
その問題が、こちら。
こちらは1998年の東京大学・理科一類の後期日程試験に出題された数学の奇問。
もはやこれは日本語なのかと疑いたくなるような難解な言い回しが随所に使われ、私のようなド文系の人間には、いったい何を問われているのかすら分からないのですが……どうやら、そんな「分からない」「解けない」に陥ったのは予備校の先生たちも同じだったようで、本来であれば出題されたその日中に解答速報を出すのが常の予備校の先生たちもお手上げ状態。解答を作成することができなかったようです。
こうして、この問題は「大学入試史上No.1の超難問」として伝説となり、今なお予備校業界で語り継がれることとなったのですが、もし、そんな超がつく難問が小説の物語を通して「分かる」「解ける」となったら、ものすごく面白そうだとは思いませんか!?
ということで、そんな実在した超難問を題材に執筆されたのが本作です。
中堅予備校「七徳塾」の数学講師・主人公の言問さくらが、他の大手予備校を出し抜き、どこよりも早く解答速報を出すべく奮闘する様は手に汗にぎる展開の連続! 一つの問題に愚直に向き合う姿勢、仲間との議論、そしてその先に待つ「あっ」と驚く一筋の光明。
小さな「分かった」「解けた」を積み重ねながら進んでいくストーリーで、私のようなド文系の人間にも数学の面白さを教えてくれる作品となっています!
「こんな難しい問題、絶対に解けるわけないじゃん」。そう思った人にこそ、読んでもらいたい作品です。ぜひ、お手にとってみてください。
以上、『予備校のいちばん長い日』の編集者コラムでした!
──『予備校のいちばん長い日』担当者より
『予備校のいちばん長い日』
向井湘吾 企画・監修/西澤あおい