ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第34回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第34回

こんな時だから現実逃避、はいいが、
「楽しすぎて戻って来れない」
という副作用に注意しろ。

現在多くのコンテンツが在宅支援のために、無料公開しているのは第一には「続きが気になったら金出して買ってくれよな」かもしれない。

しかし「これオカズにしていいのよ」と、自分のセクシー写真を差し出してくれる美女のように「これでも読んで、上手いこと現実から目をそらす時間を作ってくれよな」という、まさに今必要な支援だと言える。

しかし、日本はセックス回数世界ワースト1位であることを見れば一目瞭然なように「お楽しみ」の優先度が低い、そして「お楽しんでいる人」に対しても厳しい。

世の中で暗い出来事が起きれば「暗い方に合わせろ」という風潮なので、お楽しんでいると「不謹慎だ」と怒る人さえいる。
確かに通夜の席でyoutubeをお楽しんでいる、というならその意見は正しい。

しかし、その暗さに無関係な人を無理矢理神妙なツラにさせることが、世の中のためになるとは思えないし、むしろますます世の中が暗くなる。

休憩なしでやる仕事の効率が悪いように、現実を離れる時間なしで、現実に挑むとメンをヘラりやすくなる。
よって、現実から離れさせてくれる「お楽しみ」は、少なくとも軽んじるべきではない、特に現実が厳しすぎる今はそうだ。

こんな状況でも、楽しめるものはどんどん楽しんで元気をつけてほしい。

私も、仕事の延期などでいつもより若干時間に余裕があるので、漫画を読んだりDVDを見たりと、むしろいつもより積極的にエンタメに触れている。

ただ「現実逃避」には「楽しすぎて戻って来れない」という副作用があるので使用法を守ってキメてもらいたい。

ハクマン_34回

(つづく)
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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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