ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第70回

ハクマン第70回ワクチンの副反応で
頭が割れそうになりながら
この原稿を書いている。

ちなみにワクチンの副反応というのはどこのワクチンを使うかによるらしい。
前時代的な言い方を承知で言うと、私が受けたモデルナワクチンは男の中の男が受ける漢ワクチンだそうだ。
決して漢の生き様を見せたくてモデルナにしたわけではないが、それしか予約が取れなかったので強制的に漢を見せるはめになってしまった。
しかし、額に選ばれし者の紋章ではなく冷えピタ、右手にポカリ左手にオイコスという姿はかなり漢ではなかったと思うので、漢をこれ以上下げたくない人は、大人しく他のスイーツワクチンを選んだ方が無難だと思う。

具体的にワクチンの副反応はどんなものかというと、一言でいえば「インフルエンザ」である。
コロナを防げることよりも、人を人工的にインフルエンザ患者に出来る方がある意味すごい。反ワクチン派の人は「これはヤバいだろ」と言うのもわからなくはない。

そしてインフルエンザの時に働くのも普通ではない、そんな奴を働かせたところで、プリンを千個ぐらい誤発注して、ツイッターに「半額でいいので買いに来てください!」みたいな投稿をする羽目になるだけである。

高確率でその日インフルエンザになるとわかっているなら、やはり国は「ワクチンを受けた日と翌日は休み」を義務付けるだったのではないか。

そうしないと「我こそは選ばれし者」と信じているタイプが副反応が起こらないこと前提でスケジュールを組んで詰むし、プリンを千個誤発注するためだけにインフルエンザ出勤をしてくることになる。

申し訳ないが、世の中の仕組みというのは「ポンコツ基準」で作らないと間違いが起こりやすいのである。

ハクマン第70回

(つづく)

 
次回更新予定日
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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