ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第70回
頭が割れそうになりながら
この原稿を書いている。
最近「ワクチンの副反応による漫画の休載」を見かけるようになったそうだ。
ひと昔前なら「副反応は病気ではない」という理由で休ませなかったと思うので世の中も大分まともになってきた。
そもそも「読者のために病気でも無理をして描く」という行為の方が「作者急死」という形で読者が最終回を目にする機会が永遠に失われる、もしくは「AIに描かせる」というそれ自体がディストピア漫画なのでは、という決着をつけることになりかねない。
つまり、作家が休むことはむしろ「完結に近づいた」ということである、この理屈で言えば「ハンター×ハンター」は確実に完結するので何も案ずることはない。
そういえば最近「ゴルゴ13」で知られるさいとうたかを先生がお亡くなりになられたが、今後も「ゴルゴ13」の連載は続くらしい。
これはたかをAIが描くというわけではなく、おそらく今後は事務所のスタッフにより制作されるのだと思う。
つまり「ゴルゴ13」はさいとうたかを名人しか作れない一点ものというわけではなく、たかを工場長率いるゴルゴ生産ラインで、ベルトコンベアーに乗って流れてくるゴルゴに「眉毛を乗せる係」など様々なスタッフが関わることで出荷されているということだろう。
よって没後も生みの親が残した「ゴルゴの素」のようなホットケーキミックス的な物を使い、スタッフが作者が作ったのと変わらないゴルゴを制作できる体制になっているのだと思う。
さいとう先生がこれだけ長く作品を量産し続けられたのも、工場長がぶっ倒れてもラインがストップしない体制を作り上げたからだろう。
バイトが午後からバックレただけで詰むパン工場とは作りが違う。
ドラえもんやサザエさんのように、原作者が没後も続くコンテンツというのはそこまで珍しいことではない。
ストーリーものの場合は作者の構想が残ってなければ続きを書くことは出来ないが、単話の日常物はノウハウが残っていれば続けることも可能である。
つまり、「ゴルゴ13」は「さーて、今日も暗殺依頼と顔の濃い美女が現れましたよっと」という日常物と言っても過言ではないのかもしれない。