ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第75回

ハクマン第75回
今年の正月も
不動の変質者として
実家へ行ってきた。

この原稿を書いているのが1月5日である、まだギリギリ正月と言えなくもないが締め切りが6日なので仕方がない。

この「正月仕事をすること前提の締め切り設定」に腹を立てているようでは漫画家は務まらない。
その怒りは「自分も年末年始は普通に働いてるっす!」という体だった編集が1月中旬ごろに「今週から正月休みに入りますので」と連絡してきた時まで取っておけ。

誤解のないように言うと漫画家は正月休みがないわけではない、正月休みが取れるように仕事を進めていれば十分休める。
しかし、正月休もうと思ったら年内の仕事を早めに終わらせることはもちろん、年始の仕事まで年内に終わらせておかなければいけないのである。
不可能ではないが、これができるほど計画性がある人間がなぜ漫画家になったのかという疑問は残る。
このように、漫画家になると、休みは与えられるものではなく、作り出すもの、もしくは親や親戚を概念的に殺して奪うものになるので、休日強殺犯になる覚悟がなければ盆や正月どころか休日すらなくなり「労基さん、俺です」と自ら出頭することになってしまう。

しかし漫画家やフリーランスにとって31日に納まった仕事が1日に始まるというのはいつコブ(いつものコブラ)でしかないが世間一般はそうではない。
むしろ、平素休日を作り出すために虐殺されている親族が一番存在感を出してくるのが盆と正月である。

そんなわけで正月は「当然みんな仕事はありませんよね」という前提で、実家、義実家ともに集まることになっている。

会社員であれば「1日は仕事で」といえば、正月に出勤なんて大変ですねという話になるが、そもそも平素仕事をしているのかどうかさえ不明なフリーランスが同じことを言うと、瞬時に相手の顔がヒラリー夫人になり「ダウトー!」である。

 
次回更新予定日
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『城下町奉行日記 熊本城の罠』『城下町事件記者 熊本・文楽の里』井川香四郎
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第173回