青柳碧人 ◈ 作家のおすすめどんでん返し 01

1話4ページ、2000字で世界が反転するショートストーリーのアンソロジー『超短編! 大どんでん返し』が売れています。執筆陣が、大ヒットを記念して、どんでん返しを楽しめる映画やアニメ、テレビドラマ、実話怪談など、さまざまな作品を紹介してくださいました! ぜひチェックしてみてください。


作家のおすすめどんでん返し 01
リフォーム会社の営業の話

青柳碧人 

 実話怪談が好きで、YouTube やサブスクリプションでよく見ている。お気に入りの怪談師も何人かいて、そのうちの一人が村上ロック氏だ。新宿歌舞伎町の怪談バー「スリラーナイト」の専属怪談師であるロック氏はメディア出演も多いが、最近、エンタメ〜テレの『怪談のシーハナ聞かせてよ。』で披露された短い話にゾッとさせられた。

 とあるリフォーム会社に勤める青年が古い一軒家を見つけ、営業をかけようとインターホンを押す。玄関から出てきたのは品のよさそうな小柄な老婆で、パンフレットを見せて説明をするとにこにこうなずきながら話を聞いてくれるので、頃合いを見て「どうですか、リフォームしませんか」と切り出す。

「私はいいんですけど、主人に聞いてみないとわからないから。ちょっと待ってくださいね。……あなた?」
 老婆は家の中を振り返って大声で夫を呼ぶが、返事がない。
「あら? ……よしこ?」
 娘らしき女性の名。やはり返事がない。
「おかしいわねえ」と家の中を歩き回り始める老婆。「あなたー? よしこー?」

 老婆は家族を探して扉を開けていくが、やがて奇妙な行動を取り始める。夫と娘の名を呼びながら冷蔵庫を開けたり、タンスと壁のあいだの隙間を覗いたりしているのだ。玄関先でそれを見ていた青年は、これはおかしいぞと、靴を脱いで上がり込んだ。
「お婆ちゃん、大丈夫?」
「あなたー? よしこー?」
 家の一番奥の和室へと入っていく老婆。青年も追いかけて入ると、そこには――。

 どちらかというとSFめいた不思議な話を得意とするロック氏だが、この話は現実にありそうな、それでいて実に予想外で不可解な着地を見せる。『怪談のシーハナ聞かせてよ。第弐章 #54 怪談百物語SP(4)』収録。アマゾンプライムでもレンタルできます。

 


青柳碧人(あおやぎ・あいと)
1980年千葉県生まれ。2009年『浜村渚の計算ノート』で第3回「講談社Birth」小説部門を受賞しデビュー。同作はシリーズ化され、ロングセラーに。著書に「ブタカン!」「猫河原家の人びと」などのシリーズ、『むかしむかしあるところに、死体がありました。』『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』『スカイツリーの花嫁花婿』などがある。

超短編!大どんでん返し

『超短編! 大どんでん返し』
編/小学館文庫編集部

◇長編小説◇白石一文「道」連載第3回
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