リレーエッセイ

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 失恋の痛手は、誰もが経験するものだろう。トーマス・H・クックの小説「夏草の記憶」は、白人少年ベン・ウェイドの、謎めいた少女ケリー・トロイへの熱烈な思慕と、その想いが潰えさる顛末を物語って、痛切な共感を呼び覚まさずにおかない。
 双葉文庫から『自薦 THE どんでん返し』という本が出ています。六人の作者が自ら選んだ作品集です。表題から明らかなように、作品選択の基準は《意外性》です。これが当たりました。次々と続刊が出、さらには書き下ろしの『新鮮 THE どんでん返し』まで刊行されているのですから、そういっていいでしょう。
思い出の味 ◈ 五十嵐律人
 大学生の頃、働いて、辞めて、働いて、辞めてを、とあるイタリアンレストランで4回繰り返した。働いた総日数は約3年半。何度も辞めた理由は、よく覚えていない。勉強に集中したいとか、そんなつまらない理由だった気がする。大学生がアルバイトをする理由はさまざまだと思うけれど、僕の場合は単純に遊興費がほしかったからで、飲食店を選ん
 アニメが好きだ。小説も好きだがアニメも好きだ。衝撃を受けたどんでん返し小説は枚挙に暇がないが、屈指のアニメ好きとしては(毎季、週十五本近くを見ている)やはりアニメから選びたい。アニメでもどんでん返しが盛り込まれた作品は数多くあるが、今回全力で推したいのは、こちら。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』
 パスカル・ロジェという監督は変態だと思う。たぶん今の所、最高傑作は2007年の映画『マーターズ』にちがいない。『マーターズ』にもどんでん返し風味の展開はあったが、今回は映画『トールマン』を推薦したい。『マーターズ』は傑作だけど、『トールマン』の方が大どんでん返しの一点突破感があるからだ。
どんでん返しのオススメ……というとそれ自体ややネタバレになってしまうのが心苦しいところですが、自分の中では(いわゆるミステリでいう「叙述トリック」的なひっくり返しだけではなく)、単純に「ストーリーが意外な方向に進む」というのも広義のどんでん返しだと思っていますので、今回はそのタイプを中心に紹介していきたいと思います。
 実話怪談が好きで、YouTube やサブスクリプションでよく見ている。お気に入りの怪談師も何人かいて、そのうちの一人が村上ロック氏だ。新宿歌舞伎町の怪談バー「スリラーナイト」の専属怪談師であるロック氏はメディア出演も多いが、最近、エンタメ〜テレの『怪談のシーハナ聞かせてよ。』で披露された短い話にゾッとさせられた。
思い出の味 ◈ 石田衣良
 思い出の味というと圧倒的に安価なたべものが勝利するのは、なぜだろう。一人前五万円もする鉄板焼きとか、冬のふぐ尽くしのコースとか、その手のご馳走はまず頭に浮かんでこない。まして、海外でたべたごにょごにょと長い名前のなんとか風のひと皿なんて、記憶のかなたに消えてしまっている。
思い出の味 ◈ 阿部暁子
 普段はあまり自販機を利用しないのだけれど、寒くなってきて自販機に赤マークの温かい飲み物が登場すると、ついつい買ってしまうものがある。昭和っぽいデザインの缶に『おしるこ』と独特の味のある筆書きフォントで描かれた、あんこの粒入りの、でもお餅は入ってない、アレだ。高校生の頃、部活(吹奏楽部でトランペットを吹いていた)を終え
思い出の味 ◈ 大沼紀子
 四十歳を過ぎたあたりから、時おり無性に五平餅を食べたいと思うようになった。五平餅というのは中部地方の山間部に伝わる郷土料理だ。中部地方の山間部は広い。そのため五平餅は、地域ごとに少しずつ姿を変える。草鞋型の胡麻だれや、円形の味噌だれ、団子型の胡桃だれ、なんてのもある。
思い出の味 ◈ 伊岡 瞬
 大学三年生の夏休みに、学友六人(全員男)で北海道を旅行した。移動手段は、メンバーの親から借りた都合二台の車だ。うち二名は、東北の実家に帰省中だったので、東京方面から北上する途中で合流する。ついでに、そのうちの一軒にひと晩泊めてもらうことになっていた。当時もおそらく今も、学生は節約旅だ。雨風がしのげて、
思い出の味 ◈ 望月麻衣
 デビューする前、私はまだ幼い子の育児に奮闘する専業主婦でした。子どもを幼稚園に送り出した後、執筆した作品を小説投稿サイトに掲載し、更新するのが何よりの楽しみという毎日。
思い出の味 ◈ 中山祐次郎
「馬鹿野郎、辛すぎんだよ」およそ医者とは思えぬ罵声で叱られたのは、駆け出し外科医だった30歳のころ。東京下町の救急病院で3ヶ月の修業をした。血の気の多い救急医たちに混じって、毎日運ばれてくる超重症の患者さんの救命にあたる。
思い出の味 ◈ 道尾秀介
 あれは忘れもしない小学三年生か四年生かそのくらいの頃、友達数人といっしょに禁断の果実を食いまくったことがある。校庭の隅に植わっているビワの木が、毎年夏になると実をたくさんつけるのだが、絶対に取ったり食べたりしてはいけないと朝礼で言われていたのだ。
井上荒野さん
「あぶたま鍋」もしくは「とりたま鍋」と呼んでいた。どちらだったかも、もうわからない。母がどこかで覚えた鍋だった。ほとんど家から出ない人だったから、雑誌か何かでレシピを見たのか、あるいは父と一緒に食事の招待を受けるという年に数回程度のめずらしい機会に、どこかの料理屋でそれを食べたのか。
思い出の味 ◈ 南 杏子
 英国人のソウルフード、フィッシュ&チップスは、私にとっても思い出深い食べ物だ。夫の留学に同行し、英国で長女を産んだ。慣れない英語でドクターやナースとのコミュニケーションに汗をかきつつ、夫と二人きりで育児に奮闘した。
思い出の味 ◈ 岩井圭也
 我が家の冷蔵庫には、母が手作りした味噌が常備されている。実家ではなかなか消費できないらしく、頼むと定期的に送ってくれる。母は料理が趣味で、よく家族のためにお菓子を作ったり、近所の友人を集めてパンを焼いたりしていた。私と妹は母のお菓子を食べて育ち、一人暮らしをはじめてからもパンを送ってもらった。
思い出の味 ◈ 大島真寿美
「大島小姐~、許留山、つぶれちゃったらしいですよ、知ってます?」 「知ってる~。泣」  これは、約二十年ぶりに繋がった友人とのメッセージのやりとり。  許留山、というのは香港スイーツのお店の名前。私が